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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
75話
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ビーム砲は隔壁など紙のように貫いて中の人間を爪の先の断片すら残さず蒸発させるに余りある。
 だが、そこは本来逡巡などしてはいけないシーンだった。墜落しながら《リックディアス》が機関砲を構え、そして上方に位置していた《リックディアス》がサーベルを抜刀して肉迫する。
 ジゼルは上に位置する《リックディアス》にN-B.R.Dの砲口を指向し、機関砲を構える《リックディアス》に対してシールドを掲げ、そして炸裂ボルトを起動させた。
 機関砲に装備された榴弾が砲弾を吐き出す。既に耐久限界だったシールドは榴弾の爆発によって一瞬で破壊され、内部の推進剤に誘爆して一際大きな爆光が広がった。
 爆風に機体を揺さぶられながらも、ジゼルは臆することなく長銃身の火砲の照準を重ねる。
 トリガーを引く瞬間、不意に吹き付けた突風で微かに銃身がぶれる。迸った光軸は《リックディアス》の右肩を焼くだけだった。
 コロニー特有の気流―――脳裏を掠めるその理論(ロゴス)に顔を険峻に顰め、そしてなんとか薙ぎ払われるビームサーベルの刃を躱そうとして―――。
 《リックディアス》の背に爆光が閃く。《リックディアス》が怯んだ瞬間にバックパックからビームサーベルを引き抜くや、そのまま《リックディアス》の頭に突き立てた。
(オラァ! 余所見してんじゃねーぞ!)
 ヴィルケイの声が耳朶を打つ。咽喉から絞り出すようなその声は高G下によるものなのだろう―――一瞬だけ視線をやれば、2機の《リックディアス》の火箭、市街地からの支援砲撃を掠らせもせずにスラスターを焚いた《リゼル》がサーベルを抜刀し、《リックディアス》1機を一太刀の元に溶断した。
(4機目ェ! どうした! 俺一人殺せねーのか下手糞供が!)
 オープン回線で響くヴィルケイの声の威勢に反して、ヴィルケイの身体ステータスは思わしくなかった。
 戦闘開始から1時間。その程度の継戦で披露するほどヤワな鍛え方はしていないが、流石に長時間常に多数を相手にし続けるなど尋常ではない。識別を見る限り、どうやら襲撃に遭ったのはニューシドニーだけでなくニューマンハッタンの守備隊も、らしい―――どうりで1個中隊以上の規模の相手と戦闘しているのだとは思ったが、いくらなんでも警備が笊過ぎるだろう、と文句を言っても栓のないことだった。
「援護感謝する。にしてもいい加減あの市街地の奴らを始末しないとヤバいんじゃない?」
(つってもまず目の前の敵を突破しないと―――おわ!?)
 30kmほど離れたそこから飛来した弾丸が《リゼル》を掠めていく。
 優勢だったのは最初の奇襲だけだった。無茶をせずに堅実な攻め手を打つ。支援砲撃用の装備の《リックディアス》を市街地に置き、こちらが攻め手に転じようとした瞬間に砲撃で阻止する。なんとか戦況が拮抗しているのは、ただ相手の技量の
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