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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
74話
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過失について議論しても全く非生産的です」
 言って、男は肩を落とした。微かに後悔を滲ませた目をエレアに向けて、そうしてクレイを一瞥した。
 理法はこのイサカという男にあるのだろう。だが、エレアはなおその紅い目を巨漢に、そして禿頭の男に、そして黙して控えるエコーズの10人ばかりに全く気圧されることなく睨めつけていた。
 クレイは、固く握りしめたエレアの手を離した。そうしてエレアの頭に手を置いたクレイは、自分の胸辺りにある彼女の顔と同じ位置まで膝を曲げて、作りなれない屈託のない笑みを頑張って作った。
「大丈夫だよ、エレア。さっきオーウェンが言った言葉とここで知った情報を合わせれば、多分、666の仲間がコロニーの中で戦ってるはずだから多対1なんてことにはならないと思うから」言いながら、クレイは巨漢をちらと見上げると、男はすっかり色をなくした目で強く肯き返した。
 エレアは強く口を結んで、責めるような目をクレイに向けていた。それは責めるようなというだけではまるで説明不足だろう。まるで何の言伝も無く家を空けた親を、あるいは子どもを叱るような子どもの、あるいは親の目だった。
 「だって―――」エレアは俯きながら、掠れるような声をなんとか絞り出した。
「わたしが一緒に居なきゃ―――」
 そこまで言って、結局彼女は何も言わずにクレイを見返した。その哀哭の目を、悲愴の目を、判定の目を、不安の目を滲ませて。
 もう一度慣れない笑みを作って、エレアの頭を撫でたクレイは立ち上がって、エコーズの人間を見渡すようにした。
「露払いは引き受けます。ただ―――」
「ええ、わかっています。我々の身命を賭して、必ず」
 声こそ無かった。が、10人ほどの人間のその沈黙こそ、特殊部隊という性質の人間たちの何よりの肯定だった。
「話が決まったのならハイデガー少尉はノーマルスーツに。フランドール中尉も着替えを」
「了解しました」
 禿頭の男に従うようにその《ゲルググ》の元へ行こうとして、ぐいとクレイの上着のジャケットをエレアが引っ張った。
 振り返って、その雪のような少女の顔を見る。
「ちゃんと、帰ってきてね?」
 彼女の柔らかそうな唇はその言葉の形に強張った。
 「もちろん」クレイはエレアの左手をとって、自分の小指と彼女の小指を絡ませた。
「さっきは散々言ってくれたけど、俺だって教導隊の人間なんだからな。ちょちょいのちょいだよ」
 あ、とエレアは気まり悪そうに上目づかいで見た後、小さく肯いた。エレアの指から自分の指を離して、今度こそクレイは《ゲルググ》の元へと向かった。
 床まで降りていたキャットウォークに乗り、柱に埋め込まれたタッチパネルを2、3操作する。
「あの、一つ質問が」
「なに?」
 しずしずと上昇していくキャットウォークに一緒に乗った禿の
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