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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
74話
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らば突破が可能だという。
 エコーズとてMSパイロットが居ないわけではあるまい。エコーズで《ジェガン》と《ハンブラビ》を運用しているという話は聞いている。クレイ・ハイデガーなどよりもはるかに優れた腕のパイロットの筈だ。恐らく何らかの事情で、パイロットを秘密裏にこの場に居合わせることが出来なかったのだろう。
 エレアはダメだ。それこそ保護対象であり、MSに乗せるなど論外。もしものことがあって撃墜されればそこでゲームオーバーだ。
 畢竟、それはクレイ・ハイデガーがやらねばならないことなのであり、それによってエレアが助かる―――そして、この戦闘を終結させるための重要な因子であるというならば、それは軍人にとっての責務でも、ある。
 責務。そう、遠い昔に――が言った言葉だ。言葉は正確には違うけれど、その言葉に伴う重さは同じ性質のものだった―――。
 ―――あれ、何かおかしい。何かを忘れている、気が、する。
 でも、今はそれどころじゃないと思い直したクレイは、何か引っかかるものを感じながらも気にしないことにした。
 それでも数秒ほど逡巡する。そう、エレアでも撃墜されるIFを想定したのだ、クレイが撃墜されることの方が遥かに可能性は高い。
 だが。
 だが、クレイ・ハイデガーにとってそれが責務、義務だというのならば、どれほど迷いがあってもそれを行わなければならない。
 恐くないと言えば嘘だ。死ぬ、という言葉を想起しただけで、クレイは身体が震えるのを感じた。だがそれが何だろう、クレイ個人の快苦などいったいどうして問題になるのだろう。
「わかりました。私も地球連邦軍の軍人である以上、貴方方の任務は私にとっても負うべきものです。ただ約束してほしい。エレアの安全は―――」
「―――ダメ!」
 その後に続く言葉は、不意に鼓膜を刺したその言葉にかき消された。気が付けば、クレイの掌を拉げさせるくらいに強く握ったエレアは、睨むように大男を見上げていた。
「いくらエコーズの支援があったってMS単機で複数機と相手するなんて無謀すぎる。貴方たちはクレイに死ねって言ってる。単純にMSの操縦技術で選ぶならわたしが選ばれるべきだしまたそうするべき」
 赤い目を溶岩のように煮えたぎらせたエレアが矢継ぎ早に口を開く。大人しげでどこかのほほんとした様子の彼女からは全く想像だにしないその姿に唖然としながらも、男は声色一つ変えなかった。
「中尉は私たちの保護対象です。失うリスクは極力減らすべきと―――」
「つまりクレイは死んでも別に構わないって言いたいの?」
「そうは言っていません。ただリスクに対してのリターンが最も大きい選択が、ハイデガー少尉があの機体に乗るという選択ということです。我々エコーズのMSパイロットを事前に確保できなかったのは我々のミスです。ですが今はそのミスの
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