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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
74話
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ロニーとて持って然るべき。それなのに、ただ一人を誘拐するためだけにその大地を穢す―――。
 エレアを横目で一瞥する。エレア・フランドールという少女は、クレイにとってこそ中心的意味を占めているが、それほどの価値のある存在なのだろうか。
「疑問は最も。確かに強化人間としてのエレア・フランドールは成功体として高い価値があるのは事実だけど、ここまで戦闘の規模を大きくするほどのものではない」
 「だったら―――」言いかけたところで、禿頭の男は振り返りながら制するようにクレイの顔の前に手をかざした。
「やめておきなさい。余計な詮索をすれば、貴様はMSパイロットではいられなくなる。パイロットの本分はゲームに興じることではないでしょう」
 禿頭の男の声に親しみは無く、目出し帽越しにクレイを見据える瞳は睥睨しているとすら言えるほどに怜悧だった。
 言葉をかみ殺し、は、と俯く。エレアの手がクレイの手を握り返した。
「班長、よろしいでしょうか」
 先ほどの巨漢が身体を小さくする。禿頭の男は身動ぎ1つで肯定の意を示すと、その巨漢の男のナイフのような瞳がじろとクレイを見遣った。
「エコーズ第703部隊のイサカ・ラフバレ曹長であります。クレイ・ハイデガー少尉にやってもらいたいことがありまして」
「なんです?」
 少しだけ身を引く。
「我々の任務はフランドール中尉をカルナップ大尉の元に送り返すことと、この戦闘を終結させることにあります。そのためには市街地を通って第666特務戦技教導部隊付きの格納庫にフランドール中尉を送り届ける必要があります。外のネオ・ジオンの戦力を排除するには中尉の能力は有力な切り札になる。ですが現在市街地にはコロニー警備隊の《リックディアス》が数機存在しています。我々も対MS戦用装備は持ってきているのですが何分《リックディアス》クラスの重MSとなると手古摺る。その上敵MSは対歩兵用散弾を装備している可能性が高い」
「―――つまり」クレイは、ガントリーの中の巨人を見上げた。ふと、その肩に黄色い猛禽のマークがあるのを見とめた。
「これに乗って、露払いをしろと」
 光の燈らない単眼が挑むようにクレイを見返した。クレイと同じように、その大柄な男も《ゲルググ》を見上げた。
「性能面なら心配はありません。アナハイム・エレクトロニクス社とサナリィの協力の元、原型機を遥かに上回る性能にまで徹底的に改修されています。我々も出来る限りの支援は行います。少尉の腕なら切り抜けられる」
 男の声を、まるで異星人の発する音声のように聞きながら、クレイは虚空に焦点を合わせた。
 当たり前だが―――当たり前だが、クレイ・ハイデガーの目の前にいる男は、というよりここに居合わせているエコーズの人間たちは自分に実弾を使った戦闘をしろと言っているのだ。それも、クレイの腕な
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