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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
73話
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ト越しにヴィルケイの身体を伝っていく。
 クレイのエレアは街に行ったきり。フェニクスとクセノフォンは恐らく司令部。オーウェンと攸人は行方知れず―――。
 なるほどこれは自分が主人公って奴だな、とヴィルケイはスロットルを開きながら一人納得する。
「主人公は物語が終わるまで死なねーってのが相場だからな。なんとなかるだろ」
 スロットルを全開へ。格納庫の隔壁が開くまでは待っていられない―――だとしたら。
「ゲシュペンスト03、《リゼル》で出る!」
 フットペダルを踏み込む。爆発的な閃光を迸らせた白と橙の《リゼル》はキャットウォークとガントリーを破壊すると、推力に任せて強引に格納庫の天井を破壊した。
 外気に出るや、全天周囲モニターの中に黒々とした逢魔の光が差し込む。気流がある中での戦闘、それもコロニー特有の独特な気流の感覚を思い出しつつ、上空に上昇した《リゼル》は、その正面に目標(てき)を見定めた。
 《リックディアス》が6―――。
 光の翼を広げた《リゼル》が黒雲を切り裂く。
 ビームライフルは元より使う気はない。コロニーの中でのビーム兵器の使用は原則禁じられる。もちろん今はその『原則』には抵触しないだろう―――だが、連邦の軍人として、そしてコロニー生まれの人間の格率として、ビーム砲はコロニーの中で使用しないと決めていた。そして、それでも切り抜けられると冷静に分析できていた。
 相対距離が即座に縮まる。コロニー守備隊が装備する《リックディアス》の火器は90mm機関砲。その射程に入った瞬間にロックオン警報が鳴り、それと同時に《リゼル》の脇を90mm機関砲の弾丸が飛んでいく。
「早漏が、コロニーの中で適当に撃った弾が当たるかよ!」
 余裕の笑みを見せつつ、ヴィルケイは全天周囲モニターを目まぐるしく動く敵機と己の機体の位置、気流の流れ、そして《リックディアス》が装備するHWF GMG・MR82-90mm機関砲[ジムライフル]の弾倉に入る弾丸の数を頭の中から引っ張り出す。
 そうしてどの敵機が大よそ何発撃ったかの推定を行い、そうしながら常に敵機3機の火箭が通らないように常に敵機と自機の対角線上に敵を入れるように機体を制御する。
 全ての工程を同時的に熟す―――そしてそれを朝起きて欠伸をするのと同じくらい反射的に行い得ることがエースパイロットたる前提条件である。
 3方向、2方向から降り注ぐ弾丸の牢獄をするすると抜けながら、ヴィルケイはその瞬間を見逃さなかった。
 ヴィルケイの予想とほぼ同じタイミングで隊長機と思われる《リックディアス》が弾倉交換の素振りを見せる。後方に下がろうとする《リックディアス》を援護(カバー)するために、2機の《リックディアス》が前衛に上がろうとするその瞬間に、ヴィルケイは《リゼル》のスラスターを焚いた。
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