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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
70話
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排便の中に紛れて出てくるだろう。是非とも、その汚物の中から先ほど飲み込んだ白いカプセルを取り出す機会が巡ってくることを期待しよう―――。椅子にかけたジャケットを羽織って、そうしてモニカはデスクの引き出しを引いた。
 ほとんど中身のない引き出しの中、唯一、そして圧倒的に存在するガンメタルの武装。ミロク・ブローニング・アームズ社の小ぶりなハンドガンMB17は、女性で軍事訓練など受けていないモニカでも扱い得る。
 狭い屋内ではアサルトライフルよりも取り回しに優れるハンドガンが好まれる―――。
 所詮、そんな情報は知識でしかない。まともに銃撃の訓練すら受けたことが無いモニカに一体何ができるというのだろう。何も、出来はしない。仮に銃撃戦に遭遇したならば、ものの1秒でモニカという存在は物理的対象と化す、つまりは射殺される。そもそも相手がサブマシンガンならばハンドガンの利点など無いも同然なのだ。
 それでも、無いよりはましだ。そっと震える手でその黒々したハンドガンを手に取る。その大部分をプラスチックで構成するそれは、案外ひやりとした感触も無く、無機的で無味乾燥だ。
 撃ち方をぶつぶつ口に出しながら、それをジャケットの内ポケットに突っ込む。そしたら後は―――。
 ドアをノックする音が鳴ったのはその時だった。ぎょっとしながら応えたモニカは、もう一度インターフォン越しに「なんでしょう」と上ずった声を上げた。
「MPのフランツ・ドゥオーキン少佐です。よろしいでしょうか」
 ほっと胸を撫で下ろす。連邦の軍人ならば安心だろう―――。
 壁のタッチパネルを操作すると、灰色のドアがスライドしていき、その向こうに壮年の男が立っていた。
「モニカ・アッカーソン女史で間違いないでしょうか」
「間違いないありません。ところでいったい何が?」
「どうやらこのコロニーに向かっていた輸送船団がネオ・ジオンの部隊の襲撃を受けたとか。それに呼応するようにして、司令部施設で戦闘が開始された模様です。恐らく、最近雑務処理などで増員した民間人に扮していたのでしょう」
 司令部施設での戦闘―――宿舎のすぐ近くだ。その方向を一瞥すると、
「有事の際には貴女の生命の保護を優先するようにと命令を受けています。アッカーソン女史、行きましょう」
 「私の?」モニカは眉を顰めた。「いえ、少佐は持ち場についてください。私は一人で大丈夫です。それに、命令とは誰に―――」
「上の人間にです。さぁ、早く」
 急かすようなその男の声は、どこか不自然なほどに声が上ずっていた。
 微かな疑念を抱きつつも、モニカは逡巡する。私は一人で大丈夫です―――自分で言った言葉が頭の中で反響する。
 無理だ。司令部施設などここから200mと離れていない。そこでは今、実弾が飛び交い人間が殺傷されている―――。
「―
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