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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
69話
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うど歩いていくあの小さな女の子。まだジュニア・ハイ・スクールくらいだろうか、コートに金属のファスナーが2つ並んで平行しているジーンズを穿いて、マフラーに顔を埋めている少女の頭に伸ばした手の先を向ける。
 手にはハンドガン。黒々としたガンメタルの輝きが雲間から貫いた陽光を受け、妖しく閃く。
 照準を頭に合わせ、フレームに乗せたままの人差し指をトリガーガードの中に入れる。指の腹が、確かな硬さを持った金属の感触―――トリガーを知覚した。
 幻影のマズルフラッシュが網膜の中で爆発し、軽く鈍い振動が右腕の神経を波打つ。銃口から飛び出した黒々とした弾丸は400m/sを超え、10mと離れていなかった場所を歩いていた少女の頭を一発で綺麗な現代アートに変貌させた。道路に散らばった脳漿は耽美なもので、フライパンでじゅーじゅー炒めれば美味しそうだなぁ、なんて思ったり。後は脳みそを毀した少女の服を剥いで、身体を死姦すれば終わり―――。
 溜息を吐いた。流石に『そっち』の趣味は無いよなぁ、と物理的現実の世界の少女を眺めた。 もちろんクレイの想像上の破戒の影響などは露一つなく、今日一日を健気に過ごすであろう金髪の少女の背が跳ねるようにしながら遠ざかってく。
 少し露骨すぎる。頭の中で検閲官(りせい)が顔を顰める―――クレイも素直にそれに賛同した。身体的な欲求やら必要やらを無暗に抑圧するのは意味がないが、かといって放蕩すれば良いというわけでもあるまい。それも、持ってもいない趣向を無理くり作る必要も無い。何事も中庸が大事、と古代ローマの偉い人も言っている。
 ハの字に眉宇を顰めながら銅像の台座に身体を寄りかかる。クレイは少女の背を、特になんともなしに眺める―――。
「あの、よろしいでしょうか」
 ふと、声が肩を叩いた。
 声の方向を見やる、黒いコートに身を包んだ壮年の男が立っていた。紳士を思わせる帽子に口髭を生やしたその風采は、パッと見で気品高さを感じさせる。軍の関係者、それも上の人間かと考えたクレイは台座に寄りかかった身体を起こした。
「なんでしょうか?」
「いえ、そう大げさな話ではありませんよ」男が人の良さそうな微笑を浮かべる。
「今日は雪が降ると聞いたのですが、本当でしょうか?」
「は―――雪、ですか?」
 思わず目を丸くして、クレイは空を見上げた。
 なるほど空は厚い雲に覆われている―――空を見上げても、分厚く黒い雲向こう側に街は見えない。それに、そもそもそういう季節でもない。クレイの服装はインナーにタンクトップを着て、その外にシャツとジャケット。そしてパンツを穿いているだけの格好で、冬の気候であるならこのような軽装はする筈も無い。
「いえ、降らないと思いますが…」
「そうですか」男は微か程も身動ぎしなかった。「ええ、ありがとうございます」
 男
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