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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
66話
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、以前までの《キュベレイ》との『乗り心地』を比較していたというわけだ。
「任務っていうくらいなんだから兵装くらい支給してくれてもいいのに」
 思わず悪態をつく。
「まぁまぁ。パラオも余裕無いんでしょ。それに、最近なんか作ってるみたいだし」
 口を堅く噤む。金のかかるわけのわからないワンオフ機を作るなら、ちゃんと軍そのものの兵装の充実を図ってほしいのだが。自分はともかく、エイリィは腕の立つパイロットなのだ。《ギラ・ドーガ》の1機も渡してほしい、と思う。
 もちろん、そうする余裕がないと言ってしまえばそうなのだろうが―――。
 整備班には悪いと思うが、こんなあり合わせの《キュベレイ》よりかはよっぽど《ガザD》の方が安心できる。
 それに、次の任務はそれだけ規模の大きなものになる。参加する部隊だって、あまり目立った行動が出来ない現代にあって、MS2個大隊以上の戦力を投入するほどなのだ。
 ぽん、とエイリィが肩を叩く。
「ま、今回は前みたいな危なっかしい奴と戦うわけじゃないし。だいじょーぶっしょ」
 にいっとエイリィが間延びしたような笑みを見せる。エイリィはどうしてこう、無邪気さと大人の温かさが同居した笑みを浮かべられるのだろう―――?
 嫌な予感がする。そんなに明瞭な輪郭を持った危機感ではなく、世界との境界線もおぼろげでそこに果たして存在しているのかすら不明な、漠とした負のベクトルの運動を持った存在の到来の予感―――。
 シャワーでも浴びよう―――今日は、久しぶりに水を多く使える日だ。ノーマルスーツの前を開け、胸に風を入れる。エイリィも一緒にシャワーを浴びることにして、格納庫を後にする。ロッカーでノーマルスーツを脱ぎ、シャツとショートパンツ姿でシャワールームに向かっている途中だった。
「ねぇ、プルートってずっと軍人だったの?」
 隣に並んだエイリィが、なんでもないことのように口にした。
「そうだな。そういう目的で作られたわけだし」
 返すプルートも、特に含意することもない。ふーん、と相槌を打つエイリィも、大して気にした風ではなかった。
 強化人間、作られた人間。それこそ悲劇のヒロインにでもなりそうな生い立ちだが、別にプルートは特に自分の人生に思うところなど無かった。そもそも、そういう風に作られているのである。幸福な人生とは何か、という問いは人類史の開闢から問われ続けた難題だが、目的に適った人生こそ幸福であるという思想も、強く信じられた幸福論だ。
 そういう点から見れば、プルートの人生は比較的幸福であると言えるだろうし、プルート自身もそう思っている。自分は戦争の有益な資源として作り出された存在である。プロジェクトという点から見れば、MSパイロットの素養がどうしても発現しなかった彼女は失敗作のレッテルを張られ、同じような境遇の姉妹た
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