65話
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彼の行動理念は最早怨嗟の域に届いていた。己の貧弱さと上の人間へのルサンチマンを糧にして、ただひたすらに己という世界卵を破壊し、雄々しきハイタカへと成ろうともがいていた。
結局、彼は片手で数えられるかられないか、というくらい異性に振られ続けた。時にストーカーまがいの行為にまで及び、彼は世界から存在価値を拒否されているという誇大妄想な現実に敗北し続けた。そしてその度に、自分はこの世界に居て良いんだという単純な意義を見出すために、逆説的だが取りあえず自分を殺すことにしたのである。
ハイスクール時代も、青春などというきらきらした言葉に憧れを抱く感覚すら持つことが出来ずに過ぎていき、気が付けば大きな人生の岐路に立っていた。
数ある選択肢の中で、彼が選んだ将来は軍人だった。義務感、と言ってしまえばその通りだ。彼の行動理念がなんであろうと、自己教育の結果彼の理法たる善への意思が彼を支配していたからである。MSパイロットになったのは、それなりの適性というだけだ。あとはMSパイロットという高度な知性を要求される都合、彼の理性の存在は適応的だったのである。
士官学校時代は、ただひたすらに規則に支配されながらも、その少ない間隙を縫うようにして思想に没入していた。相変わらず、彼は孤独な戦いを人知れず繰り広げていたのである。『1』という数字の孤独と恐怖にもがきながら、『多』の隣で独り静かに血を流していた。
士官学校を卒業すると同時に教導隊に入ったという事実は、彼にとって報いだった。それは精鋭であることの証であり誇りである。彼自身もそれを強く自負とした。だが、言ってしまえばそれのためにほかの人生全てを毀したのである。
23年、そんな人生。仮に比喩的に人生を道と考えるならば、彼の道は常に工事され真新しい舗装の道路だった。ただそこを歩む人は無く、足跡一つついていない道路のくせに欠陥を見出しては常に道路を舗装し続ける。孤独と言えば孤独な道なのかもしれないし、孤独であることは悲しいことだ。一人でいることと、独りでいることは類似性に富んだ言葉で近似したスペクトラム上に存在する言葉だろうが、その言葉の意味には微妙な差異がある。
だが、振り返ってみれば綺麗な道だなぁ、と思う。ちょっとだけ満足いかないところもあるけれど、隣の道は華やかに飾られていて羨ましくて、自分の道路の設計図は間違えたかなーなんて思うけれど。
だが、これはこれで、いいのだろう。孤独ではあってもそれは絶対の孤独だったわけではない。どこかの道と交わろうと思えばつながったし、そしてまた彼は進んで孤独から抜け出しては、また進んで一人へと還って行った。己に主体性があるという自己効力感は、常に感じていた。善い人生とは、主体性が実体的か非実体的かの次元の話ではないのであろう。
まぁそういう理屈は、ともか
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