61話
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った。彼女は言われるがままにMSパイロットになった。一方当然、というべきか、エイリィは14歳で異性と関係を持つことになった。仕方がないという言葉で片付けて良い問題かは知らないが、とにかく日に何人かの男に抱かれた。彼女にとっては仕方がない問題でどうでしようもない問題だった。そこに居なければ彼女は生きていく術など知らなかったし、別に、彼女は自分を抱いた男に憎悪など抱く気も無かった。あの日妹を屠殺した《グフ》だかなんだか、あるいはあのクーデターを引き起こした人間にも、憎悪を抱いていなかった。各々に事情があったのだ。事実を精緻に鑑みて理性的に判断すれば、それを責めたてても、しょうがないではないか。
そうしてMSの戦闘をして食って寝てセックスしての生活をしている中で、自分の胎の中に子どもが出来た。親が誰かは、知らなかった。なんとなく戦闘が激化していた時期だったし、彼女の素質を無為にするのを嫌った上の人間は堕胎を命令し、彼女も特に頓着も無くそれに従った。
どこぞの藪医者に、彼女は任された。1日ほど入院してから手術することになり、彼女は黄ばんだシーツの脂臭さに包まれながら一晩過ごした。
次の日、彼女は腹痛で目が覚めた。
彼女は、患衣の股間の部分が赤く染まっているのを見つけた。ぎょっとして青竹色の患服をはだけさせたとき、彼女は自分の股間の付近、黄ばんだ汚いシーツの上に何か白い蛋白の小さな塊が転がっているのを、見てしまった。
手のひらに乗せても、酷く小さく神聖なそれ。弱弱しくも尊厳の可能性を抱いていた―――否、むしろその没落したそれの姿はまさに尊厳それ自体の煌めきを黒々と解き放っていた―――それが、彼女を非難するように、死んでいた。
その白い物質がなんであるかを理解した時、彼女は全身の筋肉を緊張させて、声を上げて泣いた。12歳の少女のように弱弱しい声を上げ、ただひたすら口を目一杯に開いて瞳孔をあらん限りに引き裂いて哀哭していた。どういう感情が彼女に?い大声を上げさせたのか、彼女はまったくわからなかった。悲しかったのかもしれないし、誰かを憎んだのかもしれない。ただ1つだけ言えることは、彼女は今でも時折その居場所を失った《意味喪失的出来事の永劫回帰》という現象に対し、いつもどうしていいかわからなくなってしまうということだ。
彼女はそれ以来、男とするときはコンドームをつけさせるようにしたし、体格の小さい女の子とも自分と同じくらいの体格の女とも関係を持つようにした。
ある日、彼女は少女に出会った。小さな身体で、栗色の髪の毛の少女だった。
似てるな、と思った。
どちらに?
どちらにせよ錯覚でしかなかったのだろう。記憶の中の妹の姿など思い出せもしなかったし、己の娘だか息子なぞそもそも人間の形を成していなかった。でも、似ていたのである―――。
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