60話
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よりビームを圧縮し、ビームとしての貫通力を上げる。そしてビーム自体の照射時間を長引かせることで、さながらビーム砲でありながら刃としても振る舞う武装と化す。
対Iフィールド発生装置を考慮した武装の1つである。ただビームを超圧縮させるだけなら、技術的な難しさはない。N-B.R.Dの抱える困難は、ビーム自体の圧縮に加えビームの加速、そしてそれらの複合要素をMSが運用する火器のサイズまで小型化する点にあるのだ。あと10年か20年―――N-B.R.Dが結実するには、そのくらいの期間が必要になるだろう。
「サナリィもアナハイムからの援助が無ければ本格的に最新鋭のMSを使っての運用試験なんてできませんでしたから。持ちつ持たれつ、ですよ」
「何事もWIN-WINが一番、ね」
ふん、と鼻息を鳴らす。
アナハイム・エレクトロニクス社は巨大になりすぎた。そして、強大な組織において、腐敗は絶対的に生じる物でもある。乱立した派閥は己の防衛のための策を練るものなのである―――そこにあるのは、会社やら社会全体を俯瞰する視点ではなく、利己心の過剰な昂進だ。もちろん、市場において利己心はインセンティヴの源泉なのだから絶対悪では、ないのだが。
「アームドアーマーの試験はいつだったかしら?」
「もうすぐできますけど―――何か?」
「くだらない意地っ張りが玩具を作り始めていてね。黙らせたいから早めにお願いできるかしら」
苦笑いしながら、モニカは肯く―――と、『ガンダム』の足元でモニカを呼ぶ野太い声が格納庫に響いた。すみません、と頭を下げ、無重力の中を泳いでいくモニカの背を見送った。
マーサは再び『ガンダム』を見上げた。
くだらない夢想家が仲間内で妄想を語るのは勝手だが、その黴の生えたような苔生した理論を振りかざす稚拙は少々目に余るものがある。ホトケがどれほど懐の深い存在かは知らないが、月の女帝は己に仇成す存在に対して三度も見逃すほどの寛容を持ち合わせてはいない。刃向かうものは、己の有する最大戦力でもって完膚なきまでに叩き潰すまでだ。
ジョーカーは3枚―――。
『ガンダム』を見上げるマーサの眼差しは、恐ろしいまでに無感動だった。
※
蒼い宇宙―――。
その中を、彼女は走っていた。宇宙のどこに足場があるのかは知ったことではないが、彼女はとにかく蒼い宇宙を走っていた。
全身の筋肉が断裂したかのように痛い。額には脂汗が滲み、息を吐くたびに咽喉が焼き切れそうになる。
彼女は逃げていた。何から、という言葉を欠きながら、とにかく彼女は全力で逃げていた。足を止めれば追いつかれるという直観。そして追いつかれれば、自分は憑り殺されるという、直観。
だが、そんな行為になんの意味があろう。たとえプルート・シュティルナー
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