55話
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、人間はいつまでも殺し合っているんだよ。違うか?)
表情も変えず、フェニクスと名乗った連邦の大尉は吐き捨てるように言った。
(私の要求は黒い《ゼータプラス》から手を引けということだけだ。交換条件に貴官らの仲間を釈放しよう)
ぐいと左腕に抱えたままの《リゲルグ》を掲げる。破壊されたモノアイには光は燈っていなかった。
(隊長ーやられちゃいました……)
「エイリィ! 大丈夫なのか?」
(まぁなんとか……)
気まり悪そうな声だった。だが、酷い怪我をしているわけではない―――ほっとしながら、その感情を表に出さないように唾を飲み込んだ。
「我々がその《リゲルグ》及びそのパイロットの生命を放棄し、貴官を撃墜すると言ったら?」
(構わんよ。ただ死人がこの《リゲルグ》のパイロットと私だけでなく、貴官ら5人も含めた7人に増えるだけだ)
「なに―――?」
(あの《ゼータプラス》が装備するサイコミュシステムを完全開放すれば、貴官ら5人を撃墜するのに5分とかからないというだけのことだ。貴官らが不穏当な行動を起こした場合は私が外部操作で強制的にサイコミュシステムを作動させる。ちなみに私が撃墜されたその時点でも発動するようにセットされている。システムを作動させれば彼女も絶命するだろうが―――まぁ、貴官らの物になるよりはマシだろうな)
相変わらず表情を変えないフェニクスは、さも当然のように声に出した。
嘘だ、と思った。仮にそれが本当なら、さっさとそのサイコミュシステムを解放させて殲滅すればいいだけの話である。
あるいはこうして連邦政府の規定に反してまで交渉するほどにリスクが高い行為なのだろう。
戦力比5:2。正確には、4:2。普通に戦闘すれば勝てる相手であるが―――。
灰色の《ゼータプラス》をまじまじと見つめる。機体性能差があるとはいえ、エイリィ相手にほぼ無傷で完封する腕だ。このフェニクスというパイロットも、並みの熟練ではない。
そして、あの黒い《ゼータプラス》。蒼炎もすっかり消え失せ、パイロットが気絶でもしているかのようにゆらゆらと四肢をなえさせていた。
フラッシュバックする光景―――。
(私は貴官の賢明で迅速な判断を期待する。あと5分もすれば前線に出張っていた戦力が増援として向かってくるぞ? 貴官らとてあまり時間がないのだろう)
舌打ちした。その程度の推測が出来ないほど、敵は馬鹿ではない―――。唇を固く結んだマクスウェルは、静かに肯いた。
「了解した。貴官の要求を呑もう」
(良い答えだ―――これは貴官らの賢明さに対する私からの誠意と思ってくれ)
アンダースローの要領で《ゼータプラス》が《リゲルグ》の残骸を放り投げる。その瞬間に死んだように漂っていた黒い《ゼータプラス》を抱えた灰色の《ゼータプラス》が正面を向いたままスラ
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