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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
48話
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る。
 ビームライフルをバックパックにマウントし、素早くビームサーベルを抜きはなった蒼白の《ゴットフリート》は、《ジム・カスタム》の出来損ないのような機体が巨大な鉄骨の武装を振り下ろすより早く剣戟を撃ち込んだ。従来型よりも低出力に発振されるそれは、しかし旧世代のMSをスライスするに余りある威力だった。鉄骨を叩き割り、肩口目掛けて打ち込まれたメガ粒子の束はチタン合金セラミック複合材の身体を、バターをナイフで切るのと変わらない要領で両断した。
 良い機体だ―――ケネスは本来しなくてもいいこの仕事に対して、僅かばかりの満足感を得ていた。
 《ゴットフリート》。ケネスがテストをしていた機体と同じ系統樹にありながら、分岐して進化した機体は操縦性にこそ難があったが、なるほど《νガンダム》に匹敵する性能の謳い文句は伊達ではない。部下の大尉の敵撃墜の報告に気分を良くしていると、広域で発振された無線の回線が開くのを把握した。
 ECOSの出撃を知らせる報告に、ケネスは部下の乗るもう一機の《ゴットフリート》に無意識に視線を合わせた。
(フソウ少尉は大丈夫でしょうか)
 不安げな顔だ。
「レギンレイヴなら大丈夫さ。それに、ECOSの腕の良さは我々の想像の外にある。俺たちと一緒に居るより安全さ」
(そうでしょうか……)
 疑い深げに眉を寄せる。ナイーブな奴だ―――ケネスは思った。任務に忠実、妻子には頭の上がらないどこにでも居そうな男である。最近夫婦喧嘩が多いケネスにしてみれば、そういう平凡さというのは疎ましさを感じさせるのだ。もちろんそれは、羨望の裏返しである。
 ケネスは自機及び僚機のステータスチェックを素早く行った。
 元々長躯侵攻を主眼に置いた《ゴットフリート》の推進剤、機体の損傷度は軽微といっていい。
 対して、ベンチマークとして配備されている《ジェガン》は推進剤の残量が心許なかった。《ジェガン》は《ゴットフリート》と連携することなど想定もしていないし、出鱈目な機動を取る《ゴットフリート》に良く付いてきている方だ。
 これだから異機種間連携は嫌なのだ―――不愉快さを感じたケネスは、部隊に帰投命令を下した。
                      ※
 どん、ずばぁん。
 ―――当たり前だが、真空の宇宙にそんな音は響かない。そもそも空気のある場所でのビーム兵器の音は、そんなに存在の重さを感じさせないのだ。もっと軽々しい気分で銃口から射出され―――老紳士が、散歩をするレディにちょこんと帽子を上げるように挨拶する。そんな有様で装甲を貫き、有機的人間存在をバラバラの細かい粒へと帰還させるのが、ミノフスキー物理学が生み出したビーム兵器の存在了解なのである。
 頭の中で蝸牛を揺らさずに聞こえた音に畏怖的不快感を覚えながら、クレイは操縦桿(スティック
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