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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
47話
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ートに身を埋めたクレイは、その静的な様子と裏腹にぐるぐると思考を働かせていた。
 今は、《リゼル》の試験運用が実施されている。《ガンダムMk-V》の装備するN-B.R.Dの実戦試験は、第一小隊の面々が帰還してから行われる。それまで、クレイは確かに安全なのだ。
 嘘だ。もし何かのきっかけでエイジャックスの機関部に対艦ミサイルでも飛び込めば、誘爆に巻き込まれて確実に死ぬ。ビーム砲が格納庫に殺到しても―――。
 ぶるぶると全身が震える。大丈夫だ、と何度言いかけても有機的に浸透し合った内的持続のどこかに黒い塊が潜んでいた。後頭部に腫瘍でも凝り固まってしまったかのような奇妙な違和感を伴った漠とした鋭利な不安―――。
 (そういや俺が初陣の時は)多目的ディスプレイにクセノフォンの通信ウィンドウが立ち上がった。(出撃前にクソもションベンも漏らしちまったなぁ)
(ちょっと小隊長? 汚い話はやめてくださいよ)
 ジゼルが大げさに眉宇をきつく締める。
(なんだよジゼルだってはじめはビショビショになっただろ?)
(セクハラですよそれ! 帰ってきたらセクハラ相談センターにでも言ってやりますからね。最近ニューエドワーズの基地にも出来たんですよ?)
(小隊長は前にもホリンジャー中尉にセクハラをして呼び出されていましたね)
 オーウェンは表情筋をぴくりとも動かさなかった。
(なんだよ、俺が色情魔みたいな言い方は。つーか中尉の時だってちょっと下ネタを言っただけでだな)
(違うんですか?)
(アウト)
 どうやら負けのようだ。唸り声を上げたクセノフォンは、慌てて話題を変えるように咳払いをした。
(まぁションベン漏らそうがクソを漏らそうがそんなの普通だからな。気にしなくていい)
(いや気にするところそこじゃないでしょ―――)
 ジト目でクセノフォンを睨んだジゼルは、顔色を柔らかくした。
(国防軍の護衛もある、ブリンガー隊長もオーウェンも私も居るんだから。早々滅多なことが無ければ大丈夫)
 わずかな声しか出なかった。それでもなんとか肯く。
 気遣われている。安堵と一抹の心残りを覚えた―――最初から何でも上手くできるわけはないのだ、という理屈は理解している。今までだって、最初から上手く行ったものなど1つも無かった。できるかわからないという不安を抱え、失敗して恥をかき―――そして努力で克服してきたのだ。クレイが最初から他者より優れていたこと出来事などほとんどなかった。
 それでも、クレイは何か新しい出来事の度に不安を抱え続けていて―――。
 ―――そういえば攸人は大丈夫だろうか。初めて『弱さ』を見せた彼は、しっかり闘えているだろうか―――?
(第一小隊帰投。カタパルト上の整備兵は退避しろ、繰り返す、カタパルト上の整備兵は退避しろ)
 アヤネの無線が示し
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