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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
46話
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載したガンダムに関してフェニクスはほとんど知らなかった。
「中尉は《ゲルググ》が好きなんだな?」
 顔を赤くしながらも、顔を上げた琳霞は力強く肯定した。あどけない顔にフェニクスは微笑ましいものを感じながら、彼女は敢えて表情筋を硬くした。
「実戦で《ゲルググ》に遭遇したらどうする?」
 マホガニーのデスクに肘をつき、顔の前で手を組んだフェニクスは挑むように佇立する琳霞を見上げる。わざとらしく畏まったフェニクスの態度を理解した琳霞もまた、身に厳粛を奔らせた。
「敵に堕ちた《ゲルググ》など見るに偲びありません。私自ら葬り去ってやりましょう」
 数秒ほどピリピリした視線を交し合った後、フェニクスと琳霞は互いに破顔した。
                     ※
 アレキサンドリア級重巡洋艦『リーンホース』。ニューエドワーズの軍港に停泊しているこの重巡洋艦もまた、エイジャックスと同じく試験小隊の運用のためにニューエドワーズに配備された退役艦のうちの一隻だった。
 格納庫にずらと並ぶ機体は《ゴットフリート》―――後に地球連邦軍にRGM-96X《ジェスタ》の名を戴くことになるが、それはケネスの知る由のないことである。未だアナハイム・エレクトロニクス社の命名した型番とペットネームしか持たないその機体の体躯は、示威的に頑強そうだった。筋肉もりもりマッチョマン、と整備兵は親しみを込めた視線を送っているらしい。プロボクサーさながらの外見は、確かにその名に相応しいようだ。元々のゴットフリートという名前も、大分厳つい名前である。ドイツ語圏の人は怒るだろうか。
「フソウ少尉は大丈夫でしょうかね?」
 《ゴットフリート》のコクピットから降りたところを部下が声をかけてくる。ヘルメットを脱いだケネス・スレッグは、さぁなと素気もなく応えた。
「アナハイムも気が気じゃないのだろうな。あそこには―――」
 言いかけ、ケネスは口を噤んだ。ケネスが顔を歪めたのを察し、部下の大尉の男も険しい顔をした。
「アナハイムも忙しいものだな。あっちに手を出してはこっちに手を出して」
「今回の件も自作自演なのではありませんか?」
 冗談半ば、真剣さも半ばといったように部下は言った。
 流石にそれはないだろう―――無邪気な男の顔を見ながら、そう素直に思えないことにケネスは呆れすら感じた。
 政治のダイナミズムの裏に潜む人間心理は、得てして複雑怪奇な魔物のようなものである。一方、軍人の本領は、金持ちの手のひらの上で無知に踊り狂うことである。踊っている人間がどんな顔をしているのかを知ろうとすれば―――そういうことである。だから、ケネスは「どうだろうな」とだけ応えて、えっちらおっちら仕事をする整備兵たちを眺めることにした。
 ハイデガー中佐はよくやる―――ケネスは己の上司のほがらか
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