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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
43話
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たものだ」
「いえ、私は大したことありませんよ。皆に追いつくので精一杯です」
「教導隊とはそういうものだ」
 気にするな、とガスパールが肩を叩く。大人びたその笑みは、大隊長としての器量をひしひしと感じさせる。
 確かに、教導隊に選抜された人間は、いざ隊に入った時に技量の高さに圧倒されるという。それは知っている―――が、クレイの脳裏にはちらちらと攸人の顔が過っていた。クレイの格上と言っても過言ではない彼女とバディを組んで、謙遜のない技量―――。
「考え事かな?」
 ハッと顔を上げると、笑みはそのままにしたガスパールがいた。
「も、申し訳ありません!」
「いや、いい。君がそういう質の人間だともカルナップ大尉から伺っている。ただ、実戦中に自失してもらっては困るがね」
「肝に銘じます」
「そうしてくれ。君は将来優秀な人間になるだろうからね―――」
 目を細めたガスパールの表情は、その瞬間だけ色が変異した。冷たい、とも違う奇妙な感触に戸惑っていると、いつの間にかその表情は消えていた。いや、そんな表情はしていなかったのかもしれない。
「最近の新任は軟弱な奴ばかりだからね。君がさっき教導したタイホウ所属の部隊にも新任のパイロットが居たが真っ先に君に撃墜されていたよ―――君のような向上心を持ってほしいものだ」
 やはり、気のせいだったのだろう。さっきまでの親しみのある表情を浮かべるガスパールからは、先ほど一瞬感じた違和感は欠片も無かった。
「いえ、僕はそんなに大したことはありませんよ……」
「謙遜か―――だが、君のその立場こそが君の努力を裏打ちしているのではないか? その年で教導だけでなく、試験武装の実証試験も任されているのだからな。その謙遜も、確かな実力があるからこそ出る言葉だ」
 表情が緩みかけ、クレイは咄嗟に顔を固くした。高々ちょっと褒められただけで慢心するなど愚の極みだ。ふわふわとした気分を引き締めたクレイは、それでも感じたありがたさ故に「ありがとうございます」と礼をした。
「今後必要なのは君のような若者だ。これからも邁進してくれ―――おっと、君はそろそろ行かなければか、かな?」
 ガスパールに促され、顔を上げればいつの間にかトレーラーに載せられた《ガンダムMk-V》の姿は見えなくなっていた。話し込むとつい没入してまう。慌てたクレイの素振りに、年若い笑みを浮かべたガスパールが敬礼した。
「それでは、また会おう」
「はい。失礼しました!」
 素早く、それでもきちっと敬礼を返したクレイは、踵を返して出口へと向かった。
 ※
 ケロケロリ。
 カエルの女の子は、陽気な声で言った。
 ケロケロリ。
 プルートは、茨の園の中のシャワールームに居た。
 水を隔て、黄色い桶の底には「ケロケロリ。」の日本語に、デフォルメされた蛙
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