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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
41話
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の当然の心得だ。軍人は己に課された任務をこなし、余計なことに手を出せば火傷を負う―――それは、特殊作戦群たるECOSが最もよく心得ていたことでもあった。だから、《ロト》の周辺で装備の整備をこなす屈強な精密機械たちは、《νガンダム》のコクピットハッチが解放されたことにもやはり、気を留めなかった。
 ゆっくりと解放されたハッチの上に立った《νガンダム》のパイロットは、窮屈そうにヘルメットを脱ぎ、顔全体を覆う目出し帽を脱ぎ去ると、ぷはぁと無邪気な声を出した。
 扶桑みさき少尉は、普段着ているオーガスタ製の強化ノーマルスーツと異なるECOSのノーマルスーツの窮屈さに顰蹙を覚えながら、さらに髪を覆うヘアカバーを片手で取り去った。
 無重力空間故に夢のように広がった茶髪を素早く手で纏め、髪留めのゴムで一房をサイドポニーに縛り上げる。汗ばんだ感触が不愉快だった。早くシャワー浴びたいな、と思ったみさきは、嫌に静かな格納庫を見下ろした。
 声一つ出さず、時折出しても歯車がかちゃかちゃと鳴るほどにしか声を出さないECOSの人たち。もっと楽しそうにすればいいのになぁ、と暢気に思いながら視線を動かしたみさきの視線が1か所で止まった。
 隣に決まり悪そうに立ち尽くす《ハンブラビ》の足元。片やECOSのパイロットスーツに身を包んだECOSのMSパイロットだ。
 そしてもう片方は―――。
「中佐!」
 自然と笑みが浮かぶ。
 ハッチを蹴ったみさきは、無重力に任せて飛び出した。声を聞いた中佐、と呼ばれたショートポニーの女性が視線を左右にめぐらせた後、上から降ってくるようにするみさきを見やった。
 ベアトリーセ・ハイデガー中佐は、腰に手を当てて呆れたような笑みを浮かべた。
 そのまま宙を浮遊したはいいが、みさきはふと自分が無重力下での移動に欠かせないWSS(ワイヤーショットシステム)をコクピットに忘れてきたことを、今更に思い出した。
「わー! そこの人止めて止めて!」
 ほとんど音の無かった静謐にみさきの声がはじけた。鉄の訓練で冷静さを旨とするECOSの人間たちも、あまりにも場違いで無邪気な声色にぎょっとしてみさきの方に視線を向けた。
 あたふたと足をばたつかせるみさきの先に居るのは、ベアトリーセと話をしていたECOSのパイロットだ。金髪にほっそりしていならも、ちゃんとがっちりとした体つきの男は呆気にとられたように目を丸くしてたが、さすが特殊部隊の人間だった。素早くみさきの手を取り、ぐいと身体を引き寄せた。結果的に密着することになり、そのECOSのパイロットは申し訳なさそうにしながらみさきを離した。
「失礼」
「いえいえいいんですよ。ありがとうございます」
 ぺこりと頭を下げる。ECOS所属のMSパイロット、オリェーク・ジュガーノフ大尉も、一礼を返した。

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