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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
41話
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落が効いているのか皮肉が効いているのか。一応、『救国の聖処女』の名を関する艦はいるのが救いか―――。
 ざわざわと騒ぎが大きくなっていくブリーフィングルーム。
どこか日常の延長のようにも感じられるその喧騒を、クレイは途方に暮れたように眺めた。
 実戦―――。
 クレイは、形をもったその言葉に、隠微に身震いした。
                    ※
 ラー・カイラム級機動戦艦ジャンヌ・ダルク。
 第一次ネオ・ジオン抗争―――正確にはそれ以前から見られたが―――以降、戦争が大規模な戦乱から小規模な武装組織が起こすテロリズムへと移行していくにつれ、地球連邦軍が武装の性能の中で重視したのは一重に機動力だった。武装勢力が出現した場所への素早い展開力の重視は軍事システムの改革に及び、それに伴い要を成す艦船の見直しへと進むことになる。即応部隊として編成される機動打撃群や、独立作戦群『ロンド・ベル』は、従来のマゼラン改級戦艦では機動力に難ありとし、新型の戦艦の開発を要求。それに応える形で開発されたのが、ラー・カイラム級機動戦艦だ。24機2個大隊規模のMS搭載能力を有する厖大な格納庫は、しかし今は酷くこざっぱりとしたがらんどうだった。
 格納庫には人間味を感じさせる音はしておらず、ただ機械的な音だけを立てながら、ECOSの隊員たちは人員輸送艇V-SFS-90C《ベース・ジャバー》の整備をしていた。
 ガントリーに立ち並ぶ機体は2機。内1機、ダークブラウンに染め上げられた機体もまたECOSのMSだった。
 RMS-139B《ハンブラビ》。航空機の鋭角さと海洋生物の滑らかさを感じさせる特異なデザインのMSは、可変機ながらも《ゼータプラス》より遥かに簡便な変形機構による高い整備性の高さと閉所における格闘戦能力を見込まれ、特殊部隊向けに少数生産された機体だった。本来歩兵を主要な戦力とするECOSにあって、MSは歩兵支援目的で投入される戦力だが、それでもMSを運用すること自体は珍しいことではなかった。
 ―――だが。
 《ハンブラビ》の隣に佇む機体は、明らかに異様だった。
 四肢をもった様は人体そのものだが、その背部に装備されたユニットは翼を想起させる。ダークブラウンに身を窶しながらも、全身に施された増加装甲で全身を覆い隠し、人体に相似的であるのに対して怪物のようでもある外観はセラフィムのごときであった。
 RX-93-N2《νガンダム》。ヘビーウェポンシステムを装備した伝説の名機の改修機は、光の宿らない鋭利な盲眼で下界を睥睨していた。
 ECOSの人間は誰もその《ガンダム》に目をくれない。むしろ存在すらしていないように振る舞っていた。
 『Need to know』―――知るべきことを知り、知る必要のないことはわざわざ知る必要も無い。軍人として
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