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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
38話
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ら見て上空に、なるべく艦隊から見ても上の方へと向けた。
 前面から眺めるラー・カイラム級機動戦艦の美しくも峻厳さを湛えるその巨体は、少女の身でありながらも勇猛果敢に戦った―――そして酷く大飯ぐらいだったという()処女(ピュセル)の名にふさわしい。
「モニカさん、良いですよ」
(わかりました)
 モニカの声と共にコクピットの右側で光が奔った。筒先から溢れた閃光は、そのまま伸びていき―――。
 ※
 感嘆の声がブリッジを包んだ。
 前方に広がるそれ―――光で構成された旗は、くっきりとニューエドワーズ基地を示す五芒星に機械じみた翼のマークを描き、真空の宇宙にはためいていた。
「ニューエドワーズの開発は順調のようですな?」
 一人、冷めた口調で副官の男が呟く。皮肉屋なのはいつものことと受け流したウォースパイト機動打撃群司令アヴァンティーヌ・アレジ少将は、ウォースパイトの艦長席で「綺麗なものですね」と両手を合わせながら女性らしい柔らかい物腰で言った。
「ビームフラッグ……Iフィールドを利用してあんなことが出来るとは思いませんでしたね。流石アナハイムとサナリィが技術研究をしているといったところでしょうか?」
 ガスパール・コクトー中佐は、人の良さそうな笑みでアヴァンティーヌの声に頷いた。
「テストパイロットたちも素晴らしい技術の持ち主です。きっと作戦を成功に導くでしょう」
 その血筋故か、ガスパールは落ち着き払った貴族然とした柔和な物腰だ。
「そうでしょうか。第一次作戦に加わる第666部隊には新人が居ると聞きますが」
 副官はどこか疑い深い目でガスパールを見やる。
「あの《ガンダムMk-V》にしても実戦実証していないような代物でしょう? 実戦に耐えうるものかどうか」
 眉間に皺を刻んだ副官は、再び視線を前へ―――《ジェガン》2機と並んでフラッグを掲げる《ガンダムMk-V》へと向けた。
 最もだ、とガスパールは思い、そうして副官の視線をなぞるようにモニターに投影された《ガンダムMk-V》の姿を視界に入れた。
 実戦は常に死が隣り合わせだ。そんな中、死を拒絶するにはどうするか―――危険要素はなるべく減らすのだ。機体の整備は万全に、兵装はなるべく信頼性の高いものを。軍隊において、試作機や実験機が忌み嫌われるのは、なにもかつての普遍論争におけるクラシカルへの羨望、新しいもの嫌いな嫌味ではないのである。そこに生命が、引いては作戦全体の成否がかかっているからこそ、コンバットプルーフ主義者になるのである。何の保証も無い机上の論は、実証性のない仮説―――天気予報のお姉さんが、唐突に火が降ってきますと言うのと何等変わりのないものなのだ。一年戦争の最終局面において、ジオンでベテランパイロットが《ゲルググ》を嫌った理由は機種転換を面倒臭がったことだけ
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