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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
38話
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属と目的を明らかにされたし。繰り返す、貴官の所属と目的を明らかにされたし)
 オペレーターの男の声色は、しかしその事務的な内容に比して酷く楽天的だ。もちろん、この無線の向こうにいる彼はクレイの目的を事前に知っているためである。クレイも生来の本性から生真面目に所属を告げながらも、その心の内に占める緊張は敵への強襲の際のそれではなかった。
 機動打撃群旗艦たるロンバルディア級重巡洋艦『ウォースパイト』と、今回臨時に編成されたラー・カイラム級機動戦艦『ジャンヌ・ダルク』の間を、真紅に染め上げられた《ガンダムMk-V》が駆け抜けていく。視界を左右に振れば、機動打撃群を編成するクラップ級巡洋艦『ソウリュウ』、『コーンウォール』、『ドーセットシャー』、『リシュリュー』が目に入る。今となっては珍しいアンティータム改級補助空母『タイホウ』も、ジャンヌ・ダルクと同じく臨時編成された艦だった、とクレイは事前に渡された資料の記述から思い出した。
 即応部隊として編制される機動打撃群は旗艦を含めてMS母艦が5隻に輸送艦が2隻という編成が通常であるという事実を鑑みれば、その箱を繋げただけのような野暮ったい外見のタイホウの存在は、却って今回の任務をまざまざと意識させる。機動打撃群向けに機動性を高められたコロンブス改級機動輸送艦『プレアデス』、『プトレマイオス』の2隻は通常のウォースパイト機動打撃群の編成だが、それに続く『ヒアデス』『イヴェール』『ダイヤ』もまた、臨時に機動打撃群に編成された輸送艦であろう。それらの存在を意識していると、不意に警戒警報が耳朶を叩いた。全く予想外の音にびくりと身を震わせた。
 警報の元―――ウォースパイトのカタパルトから宇宙に飛び出した灰緑色の機体が接近していた。
 RGM-89D。機体に増加装甲を施した《ジェガン》が閃光を引いて《ガンダムMk-V》に並ぶ。全規模量産型のD型《ジェガン》を見るのは初めてだった。ゴーグル型のカメラアイに潜む単眼が、親しげにクレイを見返す。新たな連邦の象徴ともいえる《ジェガン》の姿に、知らず感動を覚えた。
(こちら旗艦ウォースパイト所属、第11大隊だ。みなさんお待ちかねだぜ? 派手にやってくれよ)
 通信ウィンドウに壮年の男の笑みが浮かぶ。それに無線で応答しつつ、艦隊の後方へと一端逸れた後に機体を反転。モニカを意識してなるべく穏やかに機体を反転させつつ、巡航速度にスロットルを維持したままスラスターを焚き、ウォースパイトの上をフライパスする。相対距離を十分に引き離したところでスラストリバース。機体をぴたりと静止させると、並走していた《ジェガン》もほとんど《ガンダムMk-V》の隣に綺麗に静止した。
 流石だ―――芸術的な機体制動に内心口笛を吹きながらも、クレイは《ガンダムMk-V》が小脇に抱えた巨大な筒の先をクレイか
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