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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
32話
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ジト目でクレイを見据え付けるばかりだった。
 違うよ、とエレアが頓着ない笑みで2人を見比べた。
「クレイは恥ずかしいからあーいう言い方したんだよ」
 ね、と彼女の赫い柔らかな視線がクレイを正面から抱き込む。全身が、特に顔の皮膚が酷く熱くなるのを感じたクレイは、だんまりのまま俯いてしまった。
「ガキかよ……」
 結局呆れは変わらずにヴィルケイが呟く。こういうところが可愛いんだから。ねー、とエレアとジゼルの間で奇妙な合意が形成されていることは、結局クレイの耳には入らなかった。
「ま、なんにせよ良かったわね。クレイに好評で」
 うんうんとエレアが首を縦に振る。
「なんだ? ジゼルのプロデュースか」
「まーね」
 えっへんとジゼルが大きな胸を張る。さも高邁な批評家のように頤に人差し指と中指を当て、値踏みする視線をエレアに向けたヴィルケイが納得したように唸り声を上げた。
「あどけなさと妖艶さという一見アンチノミーな魅力が同時に展開されるという緊張感を感じさせる意欲的なコーディネートだな」
「うん? そうなんだ、良かった」
 ヴィルケイが滔々と語った評価はエレアには理解できなかったらしいが、ともかく褒められたらしいと把握したようだった。良かったですね、とヴィルケイに頭を撫でられたエレアは満足げに笑みを咲かせていた。
 ―――なんだか、釈然としない。その釈然としない感情の原因も十分に理解し、それが子ども染みた感傷でしかないことも理解していたクレイは、それを特に表に出さなかった。
 「お前のことだからさぁ」ヴィルケイが意味深な蒼い瞳を向けた。「スク水が良いとか言うんじゃねーかと思ったよ」
「すくみず? なにそれ?」
 ジゼルとエレアがきょとんとヴィルケイを眺める。得意げに鼻を鳴らしたヴィルケイは、
日本(ジャッポーネ)の伝統的な競泳水着さ」
「競泳水着が好きなの? それなら連邦の競泳水着でいいじゃない」
 ジゼルは何が何だかといった風に怪訝な眼差しをしていた。そうした視線も十分理解できるといったように頷いたヴィルケイがくいと顎をクレイに向ける。
「まぁ良いモノではあります……」
「ふーん?」
 興味ありげにジゼルが首をかしげた。だが、クレイはそれ以上の説明には立ち入らないことにした。スク水とはなんぞや? という話を詳細に語れば、それこそ数十分の時間を要するのである―――SUKUMIZU is philosophy。それはともかく、元々クレイはヴィルケイに連れられてきた理由を知らなかった。
「結局何をするんですか?」
「あぁ、それなんだが―――」
                     ※
「―――『アカデメイア』?」
 思わずパーソナルコンピューターの液晶画面の言葉を鸚鵡返しに音読した。眉間に深く皺を彫ったフェニク
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