32話
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分、凹凸のあまりない胸のあたりを眺めた。
『666』の格納庫に出入りするようになってわかったことが1つ。あの部隊の一部身体的特徴はオカシイ。隊長も平均よりは随分だし、07のコールサインの彼女はさらにその上位種である。何より屈辱―――ではなく理解不能なのは、監視目標である。
背が自分より低いのに。低いのに。わなわなと慄きながら、プルートは自分の胸に触れた。
取りあえず、プルートは考えるのを止めた。
判然としないまま、プルート・シュティルナーはベッドに腰掛け、天井を見る。白い天井はまだ見知らぬ素っ気なさがあったが、天井の幾何学模様みたいなものがシミらしいと知るくらいには慣れてきた。
頭を過る男の顔。
特に身嗜みに気を使っているわけでもなく、垢抜けない雰囲気を纏った男。
クレイ・ハイデガー、と言ったのだったか。クレイ―――土、という言葉が確かに似合う、派手そうなところは無い男だ。
ふと、気が付くとあの男のことを考えている。
それが何なのか、プルート・シュティルナーという少女にはよくわからなかった。ぺちぺちと顔を叩いたプルートは、なんだかよくわからないもやもやした無意識的な違和感とともに、また立ち上がって鏡台を覗き込んだ。
表情に変化はない。切れ目の少女が青い瞳で見返すばかりで―――。
と、ドアをノックする音が耳朶を打った。
「フィッツジェラルドさん、良いですか?」
男の声が扉の向こうで聞こえる。部屋に設えられた時計を見れば、もう時間だった。
「あぁ、今行くよ」
鏡台の前の椅子の、アナハイム・エレクトロニクス社のロゴマークの入った灰色のジャケットを羽織る。もう、その時にはそこにプルート・シュティルナーという存在は無く、そこに在るのはエルシー・プリムローズ・フィッツジェラルドというペルソナ連続体だけだった。
※
頬に感じた冷たさで、クレイは目を覚ました。
頭蓋の裏側に感じる重たい感触―――頭蓋を満たす髄液が液化したオスミニウム金属に変わってしまっていた。感覚器官が受け取る情報を断片とのみしか解釈不能なほどに判然としない中、表情筋が引きつるほどに欠伸をした。
「お疲れさん」
頭上から降りかかってくる声の方へ顔を向ける。知っている人物―――ヴィセンテが静かな微笑とともに、クレイの頬に冷え冷えした缶コーヒーを押し当てていた。
「すいません……ありがとうございます」
緩慢な動作で身を起こし、ヴィルケイから缶コーヒーを受け取る。プルタブを開け、口に流し込む―――ひやりとした冷感に、濃いブラックの苦味が寝ぼけた脳神経に刺激的だった。
「ったくいつまでやってんだよ。涎は垂れてるわ顔にキーボードの跡はついてるわ……」
さっと頬に手を当てる。確かに生ぬるく、ぬ
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