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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
31話
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み上がったスケジュールを変更させるのはよっぽどのことがなければ不可能なのだが―――イタリア魂は伊達じゃないのである。
「あれ広報のスチール撮影ですよね? しかも民間に公開する奴の」
 しかも《リゼル》の正式配備間近を控えての特集として、である。一方、3人の美女たちをフレームに収めてはシャッターを切るカメラマンは、きわどい角度の撮影に執心しているようだった。
(《リゼル》のメインテストパイロットのインタビューとかがあるんだろ)
 攸人が言う。納得していいのか微妙な心持ちになりながら、データベースから試験部隊のデータをサーチする。
 スリー・アローズ―――なるほどゲシュペンストに負けず劣らずの業物だった。何が、とは言わないが。
(俺の予想だがな)
 ヴィルケイの顔が淫猥に歪む。
(お前、あのちょっと大人しそうなぽっちゃりガールが好みだろ?)
 わざわざご丁寧に3人のうちの1人―――『ぽっちゃりガール』に映像をフォーカスさせる。大人しそうな見た目に反して一番布面積が少ない水着なのは、おそらくイジられてた末路だろう。心の中で十字を切った。
(うーん正鵠を射ているようですが……)
(なんだよ、文句あんのか?)
(確かにあれも良さ気です……が、多分あの眼鏡の隊長だと思うね。クレイはロリコンですけど包容力のありそうなおねーさんも好きなんだ)
(へー流石に仲が良いだけあるな……って、それ単なる女好きなんじゃねーか?)
 人の性癖に華を咲かせる2人に何を言っても無駄だということは十分思い知らされている。憮然とした顔をしながらも、聞くとはなしにスルーしたクレイは、もう一度ビーチバレーの映像に目をやった。
 エレアの水着姿が見たいなぁ―――。
(―――あ! 野郎、副隊長なんて映してるんじゃねえよ! おい! おぉい!?)
 眼前のディスプレイを握り拳で叩きはじめるヴィルケイ。
 画面の向こう、響く黄色い悲鳴と共に、黒光りする筋肉達磨が、華麗なジャンプと共に苛烈なスパイクをコートに叩き込んだ。      
                      ※
「―――そうか、わかった。下がっていい」
 一礼した男が踵を返す。執務室のカーペットの上を音も無く歩いていく男の身振りには隙が無い―――と思う。デスクから眺める男は軍属でもなければ武の修練もない。記憶を辿れば、ハイスクールでクリケットに打ち込んだのが最後のスポーツの記憶だった。それも、もう何十年も前のことだと思うと随分年をとったものだなぁ、と思案した男は思わず苦笑いが漏れた。
「失礼しました」
 もう一度一礼し、無駄に大きなドアが重々しい音を立てた。
 静かに溜息を吐いた。部屋には誰もいないし、”洗浄”済みの部屋で気を配ることもないのだが―――それでも事が事だと思うと、気を抜くことはイコ
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