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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
30話
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スクールの少年のようだった。
 だが、そうかな、と呟いた攸人の顔からは、そんな無垢さは感じられなかった。むしろ色のない表情は―――。
 エイリィは、だからと言って特に攸人に何かを聞こうとは思わなかった。悩みがあるなら話を聞こうか、というのはある種の傲慢で無知な所作でしかない。悩み、とは言語化し難い言説化以前の出来事、前理性・前本能的な本性が行き場を無くして心の裡で彷徨っている状態に他ならない。自我に統制され、明晰に語り得る悩みなどその時点で悩みと呼ぶには値しない。
 結局、特別な言葉は交わさずに朝のバイキングまでの数時間を泥濘のように混ざり合い、朝食を腹に詰め込んだエイリィは攸人と別れた。別れ際の口づけは無かった。そうして、そんな関係でいい、と思う。元々恋人同士というわけでもなく、単に友人関係に多少の―――正確には結構な―――肉体関係がある程度の間柄なのだ。あんまりねっとりするのも関係を壊すだけだった。それに、今は友人関係以外にもしがらみがあるのだからなおさら慎重にもなった。
「なぁ、そんなのでいいのか?」
 別れ際、攸人が不思議そうにエイリィのハンドバッグを指さした。攸人の指の先では、無地のハンドバッグから可愛げな熊のぬいぐるみがぴょこんと頭を出していた。昨日、攸人が何か買おうかと提案した際に、エイリィがねだったのがこの熊のぬいぐるみだったのだ。
「全然オッケーだよ」
「そうか?」
 ぽかんとした攸人の顔が、なんとも愉快だった。
 熊のぬいぐるみ。確かに子どもっぽいと言えば子どもっぽいもので、いい大人が男に頼んで買ってもらうようなものではないのだろう。だが、エイリィにとって熊のぬいぐるみは大事な物なのだ。あれはそう、一年戦争の末葉のサイド3の出来事で―――。
 ぶると肌を震わせたエイリィは、考えるのを止めた。その後、2、3やりとしたエイリィは攸人と別れた。
 Tシャツにジーンズだけという何とも適当な服装で都心を歩く。街の中心部から外れの方へとエレカを乗り継ぎ、あるいは観光目的にきょろきょろ。小型のタブレット端末とアナログな地図との睨めっこをしている姿に釣られて言い寄って来たがきんちょを散々にからかったり、途中アイスクリームの屋台でチョコミントを買い食いしているうちに、目的のビジネスホテルにようやく到着した。一応、安堵する。勇んでビジネスホテルに入り、エレベーターに乗り込み5階まで上がると、チェックイン済みの503号室のドアを開け放った。
「ただいまよー」
「おかえりなさい」
 勢いよく声を出すと、茫洋とした返事が返って来た。右手の3点ユニットに阻まれた入口から中に入ると、ベッドの上で難しい顔をしてコンビニのパンを並べているマクスウェルがのろのろと顔を上げた。
「隊長、何していらっしゃるのですか?」
「いや、どのコンビニのパン
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