27話
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ば、空になったペットボトルは中ほどでぐしゃぐしゃに潰れていた。
その音を聞いてか、盛り上がっていた布団がのそのそと動く。間の抜けた欠伸とともに身を起こした重金属オスミニウムの少女のルビーに、フェニクスの姿が映った。白磁の肌が柔和に笑む。
「遅かったね」
おかえり、と言う彼女の頭を撫でる。エレアの髪は絹糸のように滑らかだった。エレアはそのまま、フェニクスに身体に体重を預け、背に手を回してくる。フェニクスもエレアの小さな身体を強く抱きしめた。
フラッシュバックする光景。
14年前、寒々とした空気の中で遠ざかる少女の―――。
腕の中でエレアが身を捩る。恐る恐るエレアが顔を上げ、心配そうにルビーの光が揺れた。エレアは人間の感情に敏感すぎる。彼女は意図的に読むのは避けているが、強い感情はどうしようもなく頭の中に流入してくるらしい。なんでもないよ、と言葉で注げ、エレアの白無垢の頬に自分の頬を合わせた。
愛とはなんだろう? その答えを提出する術は、フェニクスには無い。
しかし、ただ1つだけ言えることはある。
フェニクス・カルナップは人間を弄ぶ悪辣なヒトだということだ。
より強く少女を身体に寄せる。顔を上げれば、黒い塊はやはり不気味な微笑をあどけなく満たしていた。
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