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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
27話
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せてか、男が赤ワインのボトルを置いた。
「これが例のもの、ですか?」
 皿をカウンターに置く。そうだ、と頷いたが、どうやらフェニクスは食べないらしい。代わりに、白ワインに合いそうなホタテのソテーが乗ったプレートを男から受け取っていた。ナイフとフォークを手に取ると、麗人は静かにクレイのグラスに赤いアルコール液を注ぐ。そうして、どこともない虚空を眺めるフェニクスが乾杯、と思い出したように呟く。クレイもフェニクスのグラスに残り僅かになった白い液体を注ぎ、同じ言葉を返した。
 なるべく音を立てないように皿の上の肉を切り分け、口に運ぶ。
 ―――はて、なんだろうか。少なからず食べたことのない味だった。だが匂いは嗅いだことがあるような、ともう一切れ口に運ぶ。絶品料理、というわけではないが、悪くなかった。
「奇妙な味ですね? なんです?」
「猫だ」
「はい?」
「猫と言っているだろう」
 表情を微かにも動かさず、ホタテを丸々口に入れたフェニクスが訝しげな視線でこちらを見る。訝しげな視線を投げてやりたいのはこちらなのだが、とカウンターの向こういる禿男を見やる―――視線が合うと、愛らしい仕草でウィンクを返してきた。
「え、猫(cat)って猫(ein katze)ですか?」
 まじまじと眺める―――確かに口に含んだ時の滓かな風味は、猫の匂いだった。
「食猫ってあるんですね…犬は聞いたことありますけど」
 半ば呆れながら口に運ぶ。決して悪くはない味なのだが―――普通にフェニクスが食べているものの方が美味しそうだな、と赤く渋い液を口に含んだ。
「あの……」
「なぁに?」
 カウンターに両肘をついた男が満面の笑みを浮かべる。
「僕にも隊長が食べているものを……」
「あーそれねぇ、ちょっとそれで品切れなのよ」
 さも残念そうに、と言った様子で肩を竦める。それだけ人気ということなのだろうと一応納得したように肯くと、
「まぁ貴方達のサイド8だっけ? にもお店出してるからそっちで食べてよ。代わりのものは今作るから」
 男は厳つい笑みを見せながら背筋を伸ばすと、調理場の方へと戻って行った。それにしても筋骨隆々なその姿は、昔プロレスでもやってたんじゃなかろーか、と思うほどだった。
 2、3の話題を喋った後、澄み切った飴色のコニャックをグラスに注いだフェニクスが、特に含みも無く、なぁと声を漏らした。
「お前は私に何も言わないのか?」
「何がですか?」
 ぐいとブランデーを飲みほしたフェニクスが緩慢な動作でこちらを見た。まだ、酔っていないように見える。
「あの子…エレアのことはもう知っているんだろう?」
「ニュータイプかということですか?」
「人工的に作られたということもか?」
 固くごつごつした透明の氷が入ったグラスに再びコニャックを垂らし
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