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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
27話
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の中に滑り込ませて振り返ると、フェニクスは背を向けて漠と佇んでいた。どうやらデスクの反対側にあるベッド下に適当に置いてあった段ボールの中から本を漁っていたらしい。
「なんです?」
 「いや―――ちょっとな」フェニクスは何かの本を手に取りながら立ち上がった。上から横からびっしりと付箋がはみ出てた薄っぺらな本をぺらぺらと捲ったあと、「気になっただけだ」と段ボールの中に本を置いたフェニクスが身を翻す。
「最近は何を読んでいるんだ?」
 「最近ですか?」クレイはデスクに振り返り、その上に置かれた分厚い本を手に取った。「最近はこれですかね?」
 まじまじとその表紙を眺めたフェニクスは、意外そうな顔をしながら頷いた。
「じゃあ、行こうか」
「あ、はい」
 柔和な微笑を浮かべたフェニクスに微かにどぎまぎしながら、彼女の隣についていった。
 エイジャックスから出てドッグを通り、サイド3首都ズムシティへと入る前の多少煩雑な検査を受けた後、市街へと降りていく。ターミナルから出ると、ひやりと冷たい風が頬を撫でる。流石にサイド5に次ぐ観光サイドであるサイド3なだけあって人は多いが、パーキングエリアを見回すと案外エレカが多く残っていた。大抵の人は長旅の疲れから自分で運転したくない、という人が多く、運転手が居るタクシーを選ぶ。それに夜ともなればなおのことだ。人が多いタクシー乗り場を横切り、黄色く角ばった車体のエレカの運転手席に手をかけると、助手席側に立ったフェニクスが車体越しの顔をのぞかせる。
「なぁ、お前運転好きか?」
「いえ? そんなに好きではないですが」
「なら運転代わってくれないか? 今日はそういう気分なんだ」
「はぁ。了解しました」
 そうか、と助手席に潜り込んだフェニクスは、そのまま這うようにして運転手席に座った。多少呆気にとられながら、クレイはエレカの後ろを回って助手席に座り、シートベルトを締めるとフェニクスがエレカのエンジンのスイッチを押した。電気自動車なだけあって、エンジン音は驚くほど静かだ。無音といってもいい。コロニーでは道路脇に常時どこでも停められているエレカが住人の足であるからして、別段それ自体驚くには値しないのだが、普段ミノフスキーイヨネスコ型核融合炉を心臓にするMSに乗っている身としてはなんとも奇妙な感覚ではあった。
 音も無く―――正確には歩行者に知らせるための音を出しながら、パーキングを出たエレカが市街を横切る。観光などに興味のカケラも無いクレイには、サイド3は目新しい街だが、コロニーの発展した街など大して違いはない。せいぜいがズムシティの官庁であるあの人面の奇抜な建物があるぐらいだろう。それにしたって、カーナビゲーションによれば違う方向だった。
「隊長って結構可愛らしい趣味してますよね」
 20分ほど市街を運転した後、
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