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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
25話
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強大さを実感する。そして、自分たちの正面装備であるRMS-106E/ESの脆弱さを顧みればみるほどに、この異機種間(DA)模擬(C)戦闘(T)を企画した連邦政府とそれを快く受諾したモナハン・バハロに唾でも塗ってやりたくなる―――。
 ふむ、と頷いた中隊長が鋭い視線を投げかける。
「つまり貴様は我々に勝ち目はない、と言いたいわけか?」
 険を孕んだ声色が琳霞に突き刺さる。中隊長の顔色と、そのあからさまな挑発の声でその意図は自然と知れた。だから特に驚きもせず怯えもせず、涼しい笑みを浮かべた。
「もちろん勝つこと自体は不可能ではありません。いえ、むしろ連邦に教えてやりましょう。我々が単なるお飾り部隊じゃないってことを、ね」
 部隊員の視線が集まる。
 戦力を測る際、MSの基本性能は大きな意義を持つ。カタログスペックから、机上のデータに表れない部分でも部隊の戦力は大きく変わる。旧大戦時において、第三帝国の機甲部隊が機動戦闘を繰り広げられたのは戦車(パンツァー)の人員と無線機の導入にあったという。そうしたインフラ―――に関しては、敵側に対してアドバンテージになるようなところはない。
 ならば次の点―――戦術・戦略レベルの作戦で敵を上回る。
 そう、ある点では我々の方が有利なのだ。
 数的優位以外に、ある。そう、綻びは戦域想定に―――。
                    ※
 グリニッジ標準時24時を15分ほど遅刻したほどの時間。店じまいも一通り済んだ禿頭の男は、いいか、と肩を叩いた声に振り返った。
「あのねぇ、今何時だと……」
 そこで目を丸くした。すまん、と謝罪する顔は見覚えがある。黒金の長髪に鋭い琥珀の瞳をどこか申し訳なさそうにする30代前半の女性は、そうして禿頭の男にしかみせないはにかみを見せた。
「来るなら来るって言ってくれればいいのに」
「仕事が忙しくてな。連絡する暇も無かった」
「いいのよ別に! フェニクスならいつだって大歓迎なんだから」
 悪いな、と頭を下げる妙齢のフェニクス。いいのいいの、と手を振りながら彼女を店の中に招いた。
 きょろきょろと周囲を見回す。フェニクスとは長い付き合いだが、男がこの商売を始めてから―――軍を抜けてからは、実際に会うことは2度3度ほどでしかなかった。
「なんだか妙なセンスだな」
「しょうがないでしょう? 一年戦争のせいで貴重品なんかはみんなパーだし。一年戦争最大の汚点は人類の貴重な遺産を喪失したことだわ」
「お前らしいよ」
 まぁね、と笑みを浮かべながら店の奥へ。フェニクスが丁寧にニスで手入れをされたカウンター席に座るのに合わせ、禿頭の男もワインセラーへと手を伸ばした。
 「これでいい?」と何本か掲げる。DRCの赤に大帝の名を頂く白。やれやれとフェニクスが苦笑いを浮かべた
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