22話
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茹だるような暑さだ。
空を見上げれば、奇妙なほどに真っ青な天上が押し寄せてくるように張り付いている。じりじりじりじり哭く虫の声色は、どこか引きつったような、苦痛に満ちた声だった。生命そのものの必要の切迫に煽られた苦痛に満ちた声、心の奥底と肌の表面に直接侵入してくる声も、遠くで聞けば単なる無害な音にしか聞こえなかった。
視界広がる長い道。綺麗に舗装された道の周囲は酷く荒れ果てていて、薄い茶色の地肌がむき出しになっていた。空の蒼さに反して―――あるいはその通りに―――世界はからからで、道脇の土を手に取って見ればぼろぼろと砕けて粉のようになっていく。白い掌に微かに残った表土の残骸も、肌の上を浚っていくような素っ気ない風に乗せられて、蒼穹へと巻き上げられていった。
額から滴った汗が髪を濡らし、顎を伝っていく。ぽつりと落ちた肉の汁が手の甲を叩く。
白い少女が道を行く。果てしのない道、永劫とも思える黒い道を歩いていく。
身体を包む少女の衣は肌の色のように真っ白な白無垢で、風に靡いた服が大地の躍動を孕む。
少女が立ち止まる。何かがずれる。道端に、少女が何かを見つける。
色彩が死んだ世界。ただ驚くほどに、蒼く美しい天井だけが、下界を見下ろすその天だけが確固として存在する世界。
そんな中、鮮やかな花が咲いていた。真っ赤な花。道端に咲く、赤くて人間の臓物みたいな綺麗な花。
ぱっくり開いた花の裂け目から覗く、きめの細かいぷにぷにとした花弁。赤い色彩はそのまま道に広がっていく。
肌を溶かすように照り付ける熱。遠くの方で哭き続ける虫の悲鳴。素知らぬ顔で大地の上を流れていく世界の蠢動。
白い少女が膝をつく。
蒼い少女の瞳が赤い花を捉え、小さく細い手を伸ばす。
自分の手―――[修正]―――じゃないみたいだ[完了]。
花に触れてみれば、ぬるりと肌を舐めるような感触だった。花の奥に手を入れてみれば、案外奥が深い。掌がすっぽり入るくらい、その花は大きかった。そして、微かにた――温度を持っていた。
花から手を引き出す。花は死んだように身じろぎもせず、ただ風に身を任せているだけだった。
赤い液が道路に落ちる。
手が赤い。掌が何かで真っ赤に染まって、爪の先まで紅だった。
道路に何かがのたうつ甲高い音が耳朶を打つ。
蒼い視線が黒いコンクリートの上をなぞる。肌を溶かすような光を受け、ちろちろと輝く銀の光。
■■■[検閲済み]だ。どうしてこんなものが落ちているのだろう、と少女は不思議そうな顔をして、膝小僧の上と太腿の間くらいの場所に手をついて膝を曲げた。
何秒かほどその■■■[検閲済み]を眺めてから、少女は左手を伸ばして、ぎょっ
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