22話
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ある夢というのは奇妙な出来事である。本来ならその奇妙な出来事を、興味深いものとして受け取るところなのだが、何分夢の内容が最悪だった。単調に、ただ同じ光景を反復するだけで、その上身動き取れないという事態では、退屈極まりない。こうなっては、意識がなまじあるだけむしろ地獄だった。ぼーっと、ただぼーっと自失して、時間の感覚が剥離していく。
たいくつだなぁ……。
なにかかんがえごとでもしようかしら。
あぁでもかんがえるのもめんどうだな……。
繰り返す光景に飽き飽きすることに飽き飽きするという謎の事態に陥りかけ―――不意に、リピートが死んだ。
「人間でいうところ」の腹部にあたる部分に、いきなり鈍痛を感じたのだ。痛みの性質からして、殴られたか蹴られたか。とにかく殴打された痛みだ、ということは、身体で理解できた。特に、外で何かあったわけでもない。ガラスの内側にいる自分に何かが起きたわけでもない。
”現実”のほうででも何かあったのだろか―――?
漫然とそんなことを考えたところで、再び―――今度は顔面を酷く引っ叩かれた。
なんだろう、今の夢は。
寝起き特有の頭痛もなければ、寝不足であればいつも身体に纏わりついてくる倦怠感もないから憤懣はないが、釈然としない。夢とは悉く意味不明なものだが、それにしても不条理極まりない。
寝返りを打とうとして、クレイは左腕が動かないことに気づいた。動かないどころか、感覚が鈍くなって痺れるような感覚―――そういえば、とクレイは今更に自分の身体に接触する異物の感触を思い出した。
少し耳をすませば、自分とは異なる可愛らしい寝息が聞こえてくる―――クレイ・ハイデガーは、自分の隣で同じベッドに寝ているエレアの存在を、改めて理解した。そうして、もうこうしたことは4度目になるというのに未だに慣れなず、妙な羞恥心を感じていることにも、気づいた。
エレアと「そういう間柄」になってから、結局「命令」の説明を受けることもされずに4週間が経とうとしていた。
エレアと初めて―――というより、人生で初めて唇同士の接触、ありていに言ってキスをしてから4週間。あの日はこれからどうなるのだろう、と不安と期待を抱いたものだったが、いざ時が経ってみれば今までと別段代わり映えの無い日々が繰り返されるだけであった。激務というわけでもないが、多忙な日々にあって互いに余計なことに使う時間はほとんどない。そのほとんどない微かな時間に、こうして彼女はクレイと一緒にベッドの中でじゃれ合っては眠ってしまうことが、数少ない彼女との関わり合いだった。彼女は、それで大変な満足を得ているらしかった。
特に含むところもなく、クレイはそっと身を横にした。腕を枕にしてすやすやと寝息を立てる彼女が起きないように腕をずらしながら、エレアと相対する格好に
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