22話
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とした。
左手が真っ赤だった。さっき花―――[限界 検討 作業開始]―――に触れたのは右手で、真っ赤になっていたのは右手の筈なのだ。
目を丸くして赤くなった左手を見ながら、銀の■■■[検閲済み]を手に取る。木製の持ち手は、手に持てば真っ赤に染まった己の手にぴたりと収まり、そこが本来―――[危険]の場所であるかのように安らっている。
■■■[検閲済み]の先が■[検閲済み]で濡れている。
鼻先を掠める赤い風。鼻孔の奥にじっとりと沈殿し、嗅覚神経に纏わりつくと、そのままずっと神経を犯していき、脳髄の奥へと[危険]這いずっていく。
左手に真っ赤に染まったボールペン[修正済み]を持ったまま、少女が背後を振り向く。
蒼い空。背後にも、果てしなく続いていく綺麗に舗装された道路が伸びていく。じりじりと嗄れ声で哭き続ける虫の声に、頬を伝っていく何かの液体。乾いた風は相変わらず大地を走って行き、巻き上げられた土埃が舞い上がっていく。
こんなに、■[検閲済み]が一杯あっただろうか。真っ赤に裂けた綺麗な■[検閲済み]が道路一杯に犇めいている。鼻をつく匂いはこの■[検閲済み]のせいだろうか。太陽に照らされ、腐敗した■[検閲済み]が熟れ[修正]て無残な姿になっている。
心臓が蠢く。不意に引き締まった心臓の筋肉が血液を全身に送り出し、意識が揺らぐ。
綺麗だ。真っ赤に裂いた大きな■[検閲済み]は見ているだけで頭がおかしくなりそうになるほどに淫猥だ[危険]。
少女が踵を返す[危険]。ふらふらと覚束ない足取りなのは、疲れているわけではない[危険]。蒼い瞳には明瞭な意思の志向を宿している[危険 検討終了]。
美しい華を美しいと感じる感性と大きな差異があるわけではない。ただ、美し――――[作業完了 強制終了]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
※
―――あ、夢だ。
クレイがそれを夢と自覚できたのは、眼前の景色に全く身に覚えがなかったからだ。
途切れることのない沈むような音に、定期的なテンポを刻む振動。排他的な冷たさを感じるより、思考能力を剥ぎ取られていくような安寧感に漂いながら、クレイはガラスの向こうを眺めた―――自分はどうやら、ショーウィンドウに並ぶ安っぽい見世物のような場所に居るらしかった。
はっきりと外を見ようとするが、曇った視界では判然としない。なにやら白いものが忙しなく蠢いて居ていた。時折、白いものが立ち止まってこちらを見やる。
夢だな、と自覚できた理由はさらにもう一つ。意識が明瞭で、五感が正常に機能している癖に全然手が動かせないからだ。ちなみに足も動かせないし、身を捩ることすらできそうにない。
それにしても、自覚の
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