20話
[5/16]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
る―――それはそれで某デブな猫の狸に見えてしまうのは気のせいだろうか―――丸っこいだけに余計に。
「男なんだな」
「違うよ? ジャックは元々女の子だったんだよ」
「え?」
「でも女の子じゃなくて男の子な気がしたから、男の子になったの」
「えぇ…」
ねー、とエレアが言うと、肯定するように黒いぬいぐるみ―――ジャックがうんうんと下に揺れた。
その愛らしいマスコット的なデザインに反して、複雑な事情を抱えているらしい。おなかに袋がついているからド…じゃなくてタスマニアデビルの雌なんだろうか。というか有袋類は雄にも袋があるのだろうか。それとも性転換手術はしていないとか?
何を考えてこんな来歴にしたのやら。
「フェニクス喜んでくれるかな?」
はてエレアが何を言ったのか、クレイはすぐに理解できなかった。
「ジャックのこと。フェニクスは気に入るかな?」
「なんで大尉?」
「これ、フェニクスにプレゼントするの」
嬉々とした笑みを浮かべ、タスマニアデビルのぬいぐるみを持ち上げて見せる。
ジャックとフェニクス。一見つながりは見いだせない―――というか全くつながりが見いだせないのだが。
まじまじとジャックの顔を眺める。マスコットの癖に死んだ魚のような目の癖に満面の笑みは小ばかにしているようにしか見えない。
案外こういうぬいぐるみが好きなのだろうか。超然とした女性、というイメージとは全くそぐわないが。いや、まぁ人の趣味にとやかくは言わないけれど
なんだか変に考えることが多いな―――漠と思案しながら、なんともなしにクレイはエレアのことを眺めた。
エレアはジャックを胸に抱いたまま、テーブルの上へとフォークを伸ばし―――。その軌跡を追うと、既に冷め始めた鉄板の上に目が行った。
小柄な少女然としている割に肉塊500gを平然と平らげる途上の鉄板の上には、その物々しい鉄板とは違う色鮮やかな食べ物がまだ残っていた。
ピーマン…だろうか。鉄板の熱に焼かれ、皮がやや変色していたが、大部分の鮮やかな緑色は損なわれてはいない。
ふとそのまま彼女を眺めていると、彼女のフォークはこってりしたタンパクの塊と、時折揚げたじゃがいも、時折黄色いつぶつぶを刺しては口に運んでいく。
「―――食べないの?」
それ、と視線で鉄板の上を指す。ぽかんとしたのも一瞬、むっと顔を顰めた。
「ぴーまんきらい」
「あぁそう…」
「ピーマンは人類の敵なんだから。こんなのいらないもん」
ぷいと顔を背けながら、揚げたじゃがいもを口に運んでいく。
ぽつねんと取り残されている緑色の野菜は、油のせいで照り返っていた。その様が泣いているように見えたのは気のせいだろう。
頑なに疎外されてしまう哀れな彼。嫌いなものは仕方ない。嫌いなものを強制したところで拒絶意
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ