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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
18話
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背部ユニット異常なし。各出力確認を完了)
(……ガントリー解放せよ)
(エイジャックスより08、ガントリー解放後にカタパルトに機体を固定してください)
「08、了解」
 鈍い音―――それは内存在的な音の聞こえなのだろう。既に《ガンダムMk-V》の装甲を挟んだ向こう側に酸素は無い。ゆっくりとキャットウォークが解放されるや、ゆっくりとした歩みで漆黒の巨像が歩みを進める。オートパイロットでカタパルトに足を乗せるほんの少しの時間は、微かな余暇になる。
 胸のざわめき。
 そもそもざわめきなのか?
 ―――逡巡の暇はそれだけだった。
「―――《ガンダムMk-V》、カタパルト接続完了」
(カタパルト接続完了。進路クリア。発進せよ)
「了解」
 逡巡の間際の迷い。
 だが気負いはない。逸る気持ちも適度にある。体調が悪かったのは昨日まで。今日は頭痛の一つも無い。
 徐々に上がっていく主機出力。
 正面に捉えた黒の海。映える陽光(こうせい)の寄合。
 行ける―――。
「《ガンダムMk-V》、ブラスト・オフ!」
 一気にフットペダルを踏み込む。ほぼタイムラグ無くカタパルトが稼働する。
 電磁カタパルトが火花を散らし、瞬時に30m近い巨体が最高速度にのるや、パチンコ玉もかくやと言った様相で弾き出された。
 ※
 全方位から降りかかってくる負荷Gの圧―――違う、と気づくのに1分とかからなかった。
 機体の反応はリニアの一言に尽きる。
 ムーバブルフレームを搭載した18mの巨人は、その巨躯でありながら人間よりもより広範に稼働する。だがその可動性をフルスペックに発揮させることはどのようなパイロットであっても不可能。負荷G超過領域にあって、人間は精妙な挙動など取れるはずがない。故にMSの挙動には『遊び』を持たせることで、微細な動作まで過敏に搭乗者の挙動入力を要求せずとも自然な稼働を可能にさせる。
 この《ガンダムMk-V》も例に漏れない。一気に加速したうえで宙戦機動をした場合、オーバーG領域下ではクレイの意思と関係なく挙動を取る―――ことになっているのだが。
 思い通りに動く―――いつにない機体との一体感に、無尽蔵の昂揚感を覚える。鋭角ターンをクイックに行使してもふらつかない安定性、OSによる機体制御もクレイが思い通りに理想的に動く。
 なるほどブロックの更新だけでMSは化けるというのも頷ける。単なる知識が実を伴った瞬間を味わいながら、礫の漂う常夜の中をするりするりと漆黒の《ガンダムMk-V》を滑らせていく。
 新調された愛機の豹変に恐懼を伴う感嘆を覚える―――が、クレイはなによりも己にぴたりと張り付き、完璧なチェイスを見せつける黒塗りの《ゼータプラス》の姿に心臓が歓喜に震えるのを感じた。
 クレイが《ガンダムMk-V》の手綱を手荒
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