16話
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に見える…のだが。
4機1個小隊という部隊編成の奇異さもあるが、何より堅実に、人の意思が宿っているとは思えないほどに機械の如く精妙に駆動する《ジェガン》とは別な1機が、モニカの視線を捕まえる。
隠密こそ是とでも言うかのように黒々とした迷彩に反し、白亜の体躯に鮮烈なる真紅のラインのカラーリングは、その挙動も相まって我こそは音に聞こえし無双の英傑と憚らないように見えた。背中から突き出た2本の突起に、機体のスタイリングは《ジェガン》とは明らかに異なる。
ARX-014《シルヴァ・バレト》。鋭角な瞳を二つ宿した威容は、《ジェガン》の慎重な浸透に対し、驚くほど大胆に市街を突っ切っていく。
(レギンレイヴ、第3次目標の撃破確認)
(グラムリード了解。小隊各機、400まで前進)
だからといって、グラムの隊長は諌めることもなく、まずレギンレイヴに先んじて侵攻。危険性無しの確認の後に、敷かれたレッド・カーペットを猪突していくレギンレイヴを今度はカバーするように追従していく。
―――まるでレギンレイヴが単機でやり合うための露払いをしているようだった。
「鮮やかな手並みね」
聞こえた声は雅の一言。基地施設にあって、その声はあまりにも不釣りあいでありながら、むしろその不一致は自分たちに原因があると思わせるほど悠然とした声でもあった。
「ねぇ、アッカーソン女史?」
一瞥だけくれる女―――マーサ・ビスト・カーバインの老獪な視線がモニカを射竦める。
鋭い視線、気品を漂わせる体躯。壮年に相応の容貌は、むしろ女帝としての風格を存分に感じさせる。ただ居るだけで、戦闘指揮所に緊張感が漂っているようだった。
「…些か奇妙な部隊編成と連携のように思われますが」
拘泥はない。マーサに一瞥もくれず、資料を抱く力を強めた。
「そう難しい話ではないわ。ただ『幻獣』たちをどう調教してやればいいか…幻想種たる一角獣と獅子を従えるのは一筋縄ではいかない―――といったところかしら」
お茶のついでの些細な戯れ―――そんな軽やかさでマーサが口にした言葉にモニカは息を飲む。
敢えて、『月の女帝』たるマーサに楯突く者がこの地にあるとは思えない。この戦闘指揮所に関しても、洗浄は隅々まで行き届いていることは間違いないハズだ。だとしても、あえて口にする必要はない。
―――溜息を吐いた。
「今回の件は感謝しています…しかし、わざわざ貴女が直接赴くとは思いませんでした」
肩の力を抜く。高々17の小娘風情で、この女帝と張り合おうとするだけ胃に余計な負荷をかけるだけだ。
マーサの浮かべた笑みは、普段の他者を圧する妖艶の笑みとは異なる。人懐っこいとはまではいかないが、娘か孫にでも向けるような静かな笑みだ。
「幻獣の担い手を直に見てみたくなった―――ではダメかしら?」
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