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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
13話
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はない。
そもそも《ドーベン・ウルフ》はただの1機で敵を蹂躙し殺戮するために生まれた(ヴェア)(ヴォルフ)。パラオ近くということもあって、普段の物資(エサ)不足ならいざ知らす、十分に腹を満たした孤高なる王は単機で中隊―――大隊規模の火力を持つ。サラミス級巡洋艦の1隻や2隻を宇宙のゴミ屑にするのは赤子の手を捩じりあげ、そのまま?ぎ取るより容易いことだ。
 MSの性能のお蔭ですよ。そのように言えば、ザミュはMSの性能を引き出すのもパイロットの腕だと語るだろう。
 それに異論はない。異論はないだけに、プルートは思ってしまう―――。
(随分賑やかなことだな)
 慣れ親しんだ声が耳朶に触れた。
(よお、お前んとこの嬢ちゃんを褒めてたところだ)
(あ、大尉あんまりからかわないでくださいよ? プルートは恥ずかしがりやなんですから)
(そーなの?)
 みりゃわかるだろ、とザミュに突っ込みを入れられたテルスがまじまじと穴が開くほどプルートを見つめる。
(うーん、わからないわ)
(まぁ今は別に顔には出てませんからね……) 
(でも見ればわかるって)
(そりゃ言葉の綾だろーがよ)
 釈然としないのか、テルスは、むーと頬を膨らませたまま、まだプルートを観察していた。年の割に子供っぽい仕草をするところがテルスの愛らしいところなのだろう。ネオ・ジオン軍の中で「テルス少尉を愛でる会」なる謎の秘密結社が組織されてしまっているのは、そういう可愛らしさを持っているからだ。プルートもその気持ちはよくわかる―――人妻相手に何やってんだ、という言及に対して、人妻こそ最大の萌え要素だと豪語するあの魔窟の住人の気持ちはよくわからないが。
 帰投の合間の小さな時間、ちょっとの喧騒。そんな空気の中で、彼は―――マクスウェルは微かな笑みを浮かべるばかりだった。
 ―――強くならなきゃ。
 胸中に湧き上がる意思。
 隊長がこの機体に自分を選んだのだ。なればこそ、この人狼の主となるに相応しい実力を身につけねばなるまい。先日のような卑屈をマクスウェルに見せるわけにはいかない。
 固い決意。それに揺るぎはない―――が、少しだけ寂しい気もした。結局エイリィは、今でこそとある機体に乗っているが、後後受領されるのはマクスウェルと同じ《リゲルグ》で「作戦」に従事するという。必然、プルートの《ドーベン・ウルフ》は後方での砲撃が主任務になる。
 通信ウィンドウに映る隊長と同僚の顔を見る。この二人と肩を並べて戦えないというのは、置いてきぼりになったような気分もある。かといって《ドーベン・ウルフ》で近接格闘戦ができるか、と言われればそれも無理な話であって―――。
(なぁマクスウェル、お前明日暇か?)
(なんだ急に? 一応暇だが)
 通信ウィンドウに意地の悪そうな笑みを浮かべたザミュが
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