13話
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
を突きつけられることとなる。
オーバーGによる機体制御不可の筈が、その汎用色に染め上げられた《リゲルグ》はぎちぎちと鋼の肉体を軋ませ、その悪魔のような単眼をバレーナ02に振り向けた。
それだけじゃない。振り向きざまに《ジムV》の右腕に赫焉の刃を薙ぎ払い、光の刃が《ジムV》の右腕の肘から先を切り裂いた。
潤滑液と白熱化した金属が体液のように舞う。
振り向いた勢いのままに左腕の斧剣が《ジムV》の胴体を狙って―――。
―――死。
そのあまりにも無味乾燥で絶望的な言葉が心臓を引きちぎる刹那、その凡庸に擬態した鬼神が脇目を振った。
(―――02、離れろ!)
声の残滓の尾を引きながら、2発の粒子弾が《リゲルグ》を襲う。直撃弾ではなく四肢を狙った砲撃はバレーナ02と《リゲルグ》を引き離すためのもの―――。《リゲルグ》は狙い通りの挙動を取った。
―――狙い通りだが、離脱の術はバレーナ02の《ジムV》の胴体に強かに足蹴りを見舞い、その反動にバーニアの推力を上乗せして迫りくる亜光速の矢を回避した。
コクピットを揺らす激震に身体中を滅多打ちにされながらも、ほんの束の間だけバレーナ02は助かった、と思った。どうあれ味方はまだいる。味方と共闘すればあの《リゲルグ》に一方的に殺戮されることは―――。
一縷にも満たない希望。
希望というにはあまりにも確証性のない期待の感情。
それが単なる浅慮と理解するのに、秒ほどの時間もかからなかった。
―――風が吹いた。
常闇の真空にあって、突風と呼ぶにはあまりにも鋭い真紅の疾風が援護に来た《ジムV》のもとに吹き荒れた。
金色の刃持ちたる風は疾風という形容すら生温い。対応を取ろうとした《ジムV》の懐に飛び込んだ疾風は、鎌鼬のそれだ。真空に生ける妖怪がその鋭利な得物で宇宙迷彩に塗られた漆黒の《ジムV》の心臓を無感情に貫く。
バレーナ02がなにがしかの感情に囚われている暇は赦されなかった。
ただ、極炎の斧剣を振りかざした悪魔が脳髄に焼き付き―――溶けた。
※
終わった。
プルートがそう思った理由は2つ。己が直観と、自艦からのレーザー通信が入ったからだった。
(こちらデューレンよりヴォルフ、ズィッヘル各機。状況終了、帰投せよ)
ヴォルフ03了解。続々と届いているであろう仲間の了の返答の合間に応じたプルートは、脱力と共にヘルメットを脱いだ。
ふわと広がる明るい栗色の髪。以前まではヘアカバーなぞせずとも良かったものだが、少し長くなり始めているな、と思った。長くなると汗がべたついて不快に感じるのだ。ノーマルスーツの生体維持機能のお蔭で汗まみれになることはなかったが、多少の不快感が命取りになりかねないのが戦場だ。
そう考えると―――プルートは思案する。ニュータ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ