11話
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空から視線を変えてはいない。
どうして彼女はそんなことを聞くのか。まさに今自分が思ったことを彼女は聞いたのだろう。
―――ニュータイプ、という力の定義は酷く曖昧だ。人の考えがわかるといってもどのレベルでわかるのかを実証的に扱ったデータはないということは、それなりに調べものをしているクレイは知っている。それでも、程度問題こそあれど、わかるのだという。彼女はよもや自分の心を見たのではないだろうか―――。
さっと風が吹いた。どこか冷たい風が彼女の銀色の髪をさわさわと撫でていく。
「嫌いだったのは過去形かな」
言う声色はいつも通り。
彼女が少しだけ視線をこちらにくれた。
「昔―――といっても18ぐらいの時だったかな。あの時はまだガキだった」
「今は?」
彼女の紅い瞳はもうクレイだけを視界に納めていた。
「今はよくわからない……ってとこだな。嫌いではなくなったけど」
んー? と歯切れの悪い唸り声とともに彼女が首をかしげる。
クレイとしても、自分のニュータイプ、という言葉に対する自分のスタンスは明瞭としていないのだ。
昔は嫌いだった。心底憎かった。否、ニュータイプが嫌いというよりも、それは生まれ持った才能、特別さに憎悪したのだ。そしてその憎悪を哲学という装備で理論武装して出してしまったのが自分の論文であって……。
「まぁ、嫌いではないかな。苦手意識はまだあるんだけど、それでもちょっとってぐらいだから」
自分の拙さを思い出していたせいもあって、クレイの表情は照れ笑いのような苦笑いのようなものになった。
そっか。一言呟き、彼女はまた空を見上げた。
「えっとね三t年…ちょっと不安だったの」
不安?
クレイは無言で、どうして、と。彼女もそれを理解しているのだろう、少し居住まいを正した。
「わたしは、それだから」
風も吹いている。自然の音は満ち満ちているのに、彼女のその指示代名詞を含んだ小さなが鼓膜を正確につつく。
それ、が何を指すのかはテクストを理解していれば明瞭だ。もちろん、クレイも理解した。「フェニクスの部屋にいったとき、クレイの書いたやつ読んだの」
「俺のって、あの俺の?」
うん、と頷く彼女の素振りは弱弱しい。
その素振りでわかる。思わず自分の額を鷲掴みにした。あの文章はあのジャミトフ・ハイマンのニュータイプ思想に依拠したところが大きい。ジャミトフ・ハイマンはニュータイプをミュータントと蔑む。流石にそこまでの憎悪でもって語りはしなかったが、それでもニュータイプなどという存在は不必要だと語った記憶は明瞭にある。
彼女は「それ」だ。「それ」を排撃するような文章を目の当たりにすれば、気に病むのは当然だ―――。
「今度からいっしょにいることになるのに、嫌われてるのは嫌だな〜って」
彼女
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