9話
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カタカタとコンソールを叩く音が響く―――。
UC.0090年代にあって、軍用MSのコクピットはほぼ全てが全天周囲モニターに換装されている。
ちょっとした大きさのドームの中に、パイロットが乗り込むシートがわびしく敷設されている様は、MSという高度な技術でもって完成しうる戦闘兵器のコクピットにしては、旧世紀の古臭いロボットアニメのコクピットのごときインチキ感のある物だった。
かちゃん、という小気味良い音が一際大きく鳴る。
「一先ず終わりっと……」
MS―――《ガンダムMk-V》のコクピットに籠っていた紗夜が大きく伸びをし、欠伸をする。彼女の今日の仕事は、一先ず終わりだった。
自分の仕事の出来栄えを確認するように、今一度眼前のモニターへと目を落としては手早くコクピット内の計器や自前のコンピューターのキーボードを叩く色黒の少女を、クレイはキャットウォークから眺めていた。
「こうして実物を見るとすげーなぁ」
気の抜けた温い息を吐いたヴィルケイが見上げる。つられてクレイも己が愛機を見上げた。
漆黒に身を包んだ新鋭のMSも、今は猛禽の如き鋭い眼光を暗くしていた。
黒地に、所々稲妻のように白のラインを引くといカラーリングは、戦闘用の兵器であって、どこか2000年代初頭の先鋭化した精神的美術を想起させる美しさがある。
対して―――。
否が応でも、黒々とした長砲身のライフルがクレイの視界に入ってくる。
ライフル、というよりかは無反動砲。ジゼルが言ったそんな言葉も、実物を見ると尚更実感のあるところだった。
肩部に増設されたアタッチメントを介して、《ガンダムMk-V》に接続された新型ビームライフル『N-B.R.D』。無機的なその黒々しさは、《ガンダムMk-V》を構成する漆のごとき黒とは異なるように感じられた。
「しっかし、今では一般化したビームライフルもまだまだ発展の余地あり、なんだな」
「一応理論上では高圧縮・高速にすることで大型MAクラスのIフィールドを貫通できるらしいですね」
「マジかよ!」
「まぁ、今のコレじゃあ、そこまでの速度にはできないそうですけど」
なぁんだ、と失望感を滲ませるヴィルケイ。キャットウォークの柵に寄りかかると、反動でさらさらの金髪が振り子のように揺れる。
クレイも柵に寄りかかり、ズボンのポケットに手を突っ込む。
目的のブツはすぐに手に当たった。ごく自然な動作でポケットから、物を取り出した。
緑色のパッケージのジュース。例の、ゲル状のグリーン・ティーだ。背面に取り付けられたストローを袋から取り出すと、挿入口の銀円へと突き刺す。
小気味良い音が鳴った。
するするとストローを突き刺すと、クレイはストローの口を咥えた。
「うげぇ。お前それ飲むのかよ……」
ヴィルケイが顔を
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