9話
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は完全に開放的というわけではない。理由は様々あるが、何分事態は単なる二元的な話ではないのが面倒なことになっているのだ。
地球連邦。
サナリィ。
そして、アナハイム・エレクトロニクス。
この三者の奇妙な逢魔の場が、このニューエドワーズなのであった。
「ま、それはそれだね。それじゃあシートに座って」
「了解」
促され、いつも座っているシートに座った。
いつもと変わらない―――。
違和感。
形容はしがたい。
目がかすむような、視界がクリアになるような。
手先の感覚が鈍るような、敏感になるような。
いつも着ているノーマルスーツではなく、SDUでシートに座るから感触が違うのだろうか。何度か座りなおす。
一息つく。
改めて、コクピットのレイアウトを見回すと、まず気づくのは右手の光景だ。
視界を遮るように設置された大型のモニター。
「それがN-B.R.D用の計器ね。といっても出力調整とかができる奴だけど」
「スティックだけで出来るようには出来ないんですか?」
「ちょっとねぇ。元々規格外の装備な上に、今日届く新型のシールド? も含めたらFCSの調整がきつくなっちゃって」
ごめんね、と頭を下げる。すまなそうな顔―――いやいや、とクレイは首を横に振った。
「紗夜さんだってできることはやってるんですから。俺にはそれを責める言葉の持ち合わせはありませんよ」
「そー言ってくれると助かるよ」
照れたような笑み。
バツの悪そうな笑み。
――――笑み。
目にかかった髪を払いのけ、軽く、操縦桿を握る。それじゃあ次は、と元気そうな声を出す紗夜の声をどこかで聞きながら、クレイは視線を上げた。
室内のみ照らされた全天周囲モニターには何も映っていない。宇宙のようにただ黒々した液晶があるだけだが―――。
違和感。
違和感……。
違和感―――。
「聞いてる?」
「え? あぁ聞いていますよ」
ほんとーに? と疑るような顔の紗夜に苦笑いを返しながら、クレイは妙な心臓の拍動を感じていた。
熱心に説明する紗夜―――上の空の自分。
薄い唇。
日焼けか、それとも地の肌なのか―――淫猥な志向を惹起させる浅黒い艶やかな肌。
―――クレイは、全身が強ばり、脂汗が噴き出た。
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