8話
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ったのか、数分だったのか、十数分だったのか。ともかく一頻り悩んだクレイは、判断を停止した。
とりあえず、だ。
まったくもって冷めた表情をしたクレイは、そろそろと右手を自分の股座へと伸ばした。触れてみれば―――触れるまでもなく、自分の『それ』が既に硬直しているのはわかっている。タンクトップに下着という服装のためもあって、クレイは難なく『それ』を外気に曝した。
予想以上に寒く、背筋を震わせながらも、右手にその熱した棒を握り込んだ。そうして、手首を上下にピストンさせる。
自分の有機体の一部であるはずなのに、そこだけ無機質な物質のような錯覚を覚えながら、クレイはただただシャフトを扱き、扱き、扱いた。
悲しきかな、自慰のネタは―――。彼女を愛撫し、唇を重ね、そして―――という、なんとも腐卵臭がたちこめてきそうなものだった。
どれくらい経ったか―――数秒で果てるほど、早漏ではないはずだ。ともかく、十何分かの格闘の末に、クレイは自分の精液を手のひらにぶちまけた。
ぬらぬらと不気味に照りかえる手のひら。
鼻を突くような、独特の匂い。
軽く、赤黒いため息を吐き出す。十秒も経つ前にベッドから起き上がったクレイは、至極冷静な面をしていた。
手のひらがべたつく。さっさとこれを拭いて、頭痛薬を飲みたいところだ。
顔を顰めもせず、部屋を見回して―――それから、顔をひきつらせた。
ティッシュが、ない。
こんな些末なことで慌てるのも馬鹿らしかったが、それでも些末なことであたふたするのが人という生き物であった。
はてどこに置いたか―――下着の中に自分のそれを仕舞い込み、ベッドから身を乗り出すと、部屋の中を浮浪する。
慣れない部屋なだけに、どこに何があるのやら。まだ荷物をまとめてすらいないせいもあって、部屋に散らばる段ボールに躓いてはよろけてを何度か繰り返す。
結局、ティッシュボックスが見つからないことにイラつきを覚え始めてから、ようやく自分の部屋にティッシュがないことを思い出す。
途方に暮れる―――といっても、いかに手のひらで反吐を催すような、それでいて嫌にならない奇妙な匂いを放つ粘液をどう処理するか、という下世話な問題で、だ。
いっそう服ででも拭くか―――気の進まない決断をした時であった。
扉を叩く軽い音が2、3回部屋の中を右往左往し、クレイはぎょっと身をすくませた。
「クレイ? もう起きてる?」
女の声―――ジゼルの、声だった。
世の中の青少年なら少なくない数が経験したであろう、AV等のエッチな産物を見ている最中の母親の奇襲に遭遇する狼狽を、クレイはありありと感じていた。何より、クレイはこの時まで少なくない青少年ではなかっただけに、なおのことである。
頭蓋の中で起こる恐慌の中、それでも冷静に事態の把
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