7話
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しく、その方がいいな、と相槌を打つばかりだった。
「んー、とおまわりに帰るからいいよ」
「そうか、なら気を付けてね」
うん、と元気よく返事をした少女は踵を返し、小走りに土手を登っていく―――と、上に登ったあたりで顧望した。
「ばいばい」
ひらひらと手を振る彼女の顔は窺い知れない。
どっちに言ったのだろう。そんな思惟を過らせたクレイは、自分の矮小さを内心窘めながら敬礼を取った。人差指と中指だけ立てるくだけたやり方だ―――格好つけているのだ。そして、自分がしてもあまり格好良くはないんだろうな、とも思った。
またね。
手を振っていた攸人が脇腹を小突く。
「もうちょいフランクにいかないとダメだって」
わかっている。内心でも、そして返答でも、そう応える。
右手に掴まれた紙パックに目を落とした。不定にうねるヘドロの化け物の眩しいばかりの笑みがプリントされたそれ―――飲んでみようか、と思った。
変わらない―――いつまでたっても。呆れるような感慨を覚える。
2人は並んで彼女の姿が見えなくなるまでぶつくさとひとしきり言い合うと、そそくさと宿舎へ向かった。
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