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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
7話
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はハッとした。なんだ、と応じる声も、上ずってしまった。
「何勃たせてんだよ……」
 一瞬、攸人の言葉が単なる音声に聞こえた。そしてその意味を理解しようと努力し、そして理解が及んだところで、クレイは自分の下半身を見やった。
「そりゃお前の性癖は知ってるけどそんなに過激だったっけ?」
 眼前に映った光景に、一人の少年的な青年は言葉を失い、情けなくなった。慌ててそれをどうにかしようとし、同時にコンテクストを理解する。
 クレイは、逡巡の後勢いよくしゃがみこむという応急処置を取った。
 丁度クレイと攸人の前まで来たところだった少女はクレイの奇行にぎょっと体を強張らせると、「どうしたの?」と拙い口調で言った。
「いや、なんか急に腹が痛くなったんだよ……」
 額に冷や汗が流れる。決して、腹痛の際に流れる脂汗ではない。引きつった苦笑いを浮かべながら俯くと、少女はどこか釈然としない様子で首をかしげたが、それ以上クレイの奇行については尋ねなかった。
 数秒ほどの沈黙―――俯いていたクレイは、ふと視線に気づいた。
 恐る恐る顔を上げると、その混じりけのない紅い瞳にクレイを映していた―――不意に、少女が身を屈め、クレイの眼前に顔を突き出した。驚いたクレイがもたつく様をぽかんとした表情でひとしきり見つめると、その蠱惑的なかんばせを子どもっぽく緩ませた。
「ふしぎな人」
 花がほころぶような―――という形容の仕方があるが、まさにそれだと思った。得体のしれない心臓の拍動を感じたクレイは、おうだのあうだの言うだけで、しどろもどろになるほかなかった。
「おにーさんも、それ飲むの?」
 不意にしゃがんだ少女の面が眼前にくる。至近で見れば見るほど見惚れる美麗な肌。心臓の中でキャニスター弾でも炸裂しているのかと思うほどの過緊張になりながら、彼女の言葉を何とか理解しようと努めた。
 それ―――右手に持った紙パックのことだ。
「私も、それ好きなの。ほら」
 ごそごそとポケットを探った彼女がそれを出す。
 紙パックに描かれているのは緑色のヘドロ野郎―――タイトルは見るまでもなく、心の中で復唱することすらばかばかしく感じる。
 旨いのか―――?
 顔が引きつる。
「旨いんだけどさぁ、それどうやって飲むんだ? 上手く飲めなくて」
 大げさに両手を上げてお手上げのポーズを取る攸人。
 少女が顔をきょとんと硬直させたのもつかの間、少女らしい華のような笑みを浮かべた少女が紙パックの裏に貼り付けられたストローの袋から中身を抜き出す。ストローを伸ばし、尖った方を紙パックの口に差し込む。
 ぱすっ、という気の抜けた音が鳴った。
「んーとね、こうやるの」
 半分ほどストローを突き刺すと、彼女はごく普通にストローに口をつけた。飾り気のない濡れた薄い唇が淫猥にその白い棒を
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