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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
7話
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イスが搭載してある。しかも、《Mk-V》に搭載されているような準サイコミュシステムではなく、まさにニュータイプ用に調整されたデバイスを搭載している―――ということは、モニカから聞いた話だ。つまり、X2型《ゼータプラス》1番機のパイロットはそれを操るに足る人間、ということになる。そんな単純な思考の探索をしてみれば、あるいは攸人の言う言葉もあり得る話である。
 むしろ、適当だともいえる気がした。クレイの乗る《Mk-V》も、元々はその型番が示す通りにオーガスタ研究所で試作された機体である。地球連邦軍のニュータイプ研究所と言えば、ニュータイプの研究によるMSの間接思考制御への貢献や優秀な機体の開発などで有名だが、他方黒い噂の絶えない所でもある。
 「強化人間」―――その肉欲的な概念には反吐が出るが、クレイはいたって落ち着き払って言葉を口にすることに努めた。
「天然物かもしれないけどな。まぁ「強化人間」如何に関わらずニュータイプの素養がある人は感受性が高いから、気分を悪くしやすいんじゃねーのかな」
 右手に持った紙パックを真上に放り投げ、そして落下してきた物をキャッチする。
 至極、冷静な声だった―――そして、割かし平静とした心持だった。
 ふーん、と納得したのかしていないのかわからない喃語のような相槌を打つ。元々思い付きだったの思考だったのかもしれない―――と思いついたように攸人がクレイを見やった。
「お前、士官学校時代論文書いたんだっけ……なんだっけ、『新たなニュータイプの展望』だっけか?」
 ああ、と曖昧に頷く。哲学系の何かの雑誌に、クレイは論文を投稿したことがある―――結果はさんざんなものだったが。「大した話じゃないさ」とばつが悪そうに苦笑いすると、攸人は屈託のない笑みを浮かべて首を横に振った。
「大したことだと思うけどね。そういうのはやっぱりちゃんとやってきた奴じゃないとできないもんだろ? 俺にはできないよ」
 攸人の声が蝸牛の内のリンパ液をざわざわとゆらめかせる。
 思わずして彼の顔を見る―――破廉恥な含蓄なぞ微塵も感じさせない、素直な素直な笑みだった。
 クレイは何事か言いかけ―――やめた。代わりに、「まぁ、趣味みたいなもんだから」と応じたクレイは、今一度空を見上げた。
「世の中ってそんなに平等じゃないよなぁ。お前が俺だったら、こんなところでパイロットしてないで大学の院にでも入ってバリバリやってたのかな」
 膝を曲げて土手に座った攸人の顔色は窺い知れない。寝そべった状態から攸人の背を見て知れることは、この男も同じようにまがい物の星空をわけもなく眺めているらしいということだった。
 どうだろうな―――応じながら、クレイは自分の『親』の顔を思い浮かべた。
「なんやかんやでMS動かすのは楽しいんだよな。哲学云々とかは趣味でできる
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