7話
[2/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
今日はまあ十分に言ったし。帰っていいですよ」
モニカがキャットウォークに寄りかかる。まだこの地に着いてから数日と言うのに、彼女の整備服と顔は油に塗れていたが、その顔には埋没した疲労感は無い。
17歳にして技は卓越―――か。
純粋に関心を覚えている自覚を持ったクレイは、苦笑いした。
脳裡に浮かぶのはあの男の顔―――嫉妬だな、と思った。
今後は気を付けます、と敬礼する。2人の返答を受けた後、踵を返してキャットウォーク端のエレベーターへと足を向けた。
キャットウォークの途上、2人の微かな声が耳朶を打つ。
歩みを止め、周囲に視線を投げた。
眼下に写るジゼルの《ガンダムMk-V》。向こうに視線をやれば、全身の装甲を取り外している作業の最中である《FAZZ》が2機。違う格納庫には《リゼル》と《ゼータプラス》が存在する―――大変だな、と思い、今一度振り返って、背後に小さくなったヴィセンテとモニカを目にした。
すっかりメカの話に花を咲かせているらしい2人の笑う声がする。かちゃんかちゃんと金属音が響く格納庫の中で、二人が何の話をしているのかは流石に分からなかった。
全く異なる機体4種を整備するのが、一体どれほど大変なのか―――互換性のある機体など皆無。《ガンダムMk-V》に至っては、特殊すぎる上に準サイコミュ搭載機だ。整備が大変なんてレベルではない。
上手く使わなければ―――思ったクレイは、ヴィルケイの顔を思い出した。
あれだけ回し蹴りや踵落とし、蹴りを見舞っておきながら内部フレームにほぼダメージを残さなかった―――と知ったのは、演習後彼の《リゼル》に乗った時だ。
またあの男の顔が視界を掠める。
苦笑いも顔に浮かんだが、それ以上に胸中を占めた感情はより峻烈だった。
まだまだ及ばない―――。拳を握りしめたクレイは、ガントリーの壁に埋め込まれたエレベーターの前まで行くと、抵抗の少ない赤い色のボタンを押した。
※
消灯時間は22時。
時計を見ると針はその時間を回って久しかった。消灯時間を迎えた宿舎は、遠くから見れば静けさを纏っていたが、クレイは未だその静瀟の内に微睡んではいなかった。
ひんやりとする夜風がクレイの頬を、頭を撫でる。さわさわと栗色の髪が靡いた。
じっとりと身体を湿らせる自分の汗が冷えるのを感じながら、深い息を吐いた。
宿舎周辺の周回はおよそ5キロ。インナーシャツにBDUという軽装であれば、5周―――およそ25キロ走った程度では息切れもしない。それでもさすがに久しぶりに実機に乗ったせいもあってか、骨の髄が痙攣するような疲労を感じ、芝生の上に腰を下ろしていた。
夜空を見上げる。
空に浮かぶ明るい星々の光―――人の営みの光が、そう見せるのだ。
地球の大地からの夜空を一度も生で見た
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ