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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
6話
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のを知覚した。
 掬い上げるようにして腕を振りぬいた《リゼル》の胴は完全にがら空き。
 彼我距離は測るまでもなく《Mk-V》のクロスレンジ内。
 勝った―――と、クレイの頭蓋にその言葉が閃いた刹那、その閃光を打ち消すがごとく激震が見舞った。右からの激震―――何、と理解するより早く、立て続けに今度は上方から脳天を叩き割られるような衝撃が脳髄をシェイクした。
 ハムノイズの音が数秒鼓膜を弄る―――頭が揺さぶられる感触がクレイを嘲笑う最中、無線通信の回線が開いたのを知らせる音が鳴った。
(CPよりゲシュペンスト08、胸部コクピットブロックに損傷、大破と認む)
 CP将校のひんやりした声を理解するのに数秒。コクピットシートに固定されたままでうつ伏せになるという気分の悪くなりそうな格好のまま、クレイは後ろを見やった。
 左腕を損傷したままの、白亜の《リゼル》が発振されていないビームサーベルのグリップを逆手に構える様が目に入った。
(惜しかったな〜もうちょっとだったぜ)
 外部音声マイクで発せられた声の様たるは鷹揚そのものだった。
(やっぱりアムロ・レイ中佐のMS肉弾戦は有用だったね〜。俺あのDVD昨日も見てたんだぜ? あそこであの蹴りがなけりゃ―――あ?)
 饒舌になったヴィルケイがそこまで言いかけた時だった。
 白亜の《リゼル》の胴体を、メガ粒子の閃光が貫き、爆炎を上げた。
(―――ゲシュペンスト03、胸部コクピットブロックに被弾、大破と認む)
 先ほどと同じように―――否、オペレーターの声は多分に呆れているように聞こえた。
 爆炎が晴れた中から、「新品同様」の《リゼル》がゆっくりと姿を現す。
(ごめんごめん、もうちょっと早く04を始末する算段だったんだけど予想外に時間喰っちゃった)
 悪戯っぽい笑みを浮かべたジゼルの姿が通信ウィンドウに浮かび上がる。
 一応、勝ったらしい―――得も言えぬ安堵を抱えたクレイは溜息を吐きながらも、「次はもうちょっと早く頼みますよ」と同じような笑みを返した。
(了解了解。次は頑張るよ)
(つかユウト! お前何かってにやられてんだよ!?)
(格闘戦に持ち込めば勝てるとか思ってたら瞬殺されました)
 2人が楽しげで親しみ深い言い争いを始めるのを脱力しながら聞いたクレイは、CP将校の状況終了の声を聴くまで身体をだらけさせた。
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