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機動戦士ガンダムMSV-エクリチュールの囁き-
6話
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クレイが吠える。応じるようにデュアルアイを鋭利にした《Mk-V》が両手でビームジャベリンを保持し、攸人の乗る蒼白の《リゼル》へと斬りかかっていく―――。
 ※
 コクピットの中にこだまする口笛の音。ところどころつっかえつっかえになって、そうして時折音じゃなくて息しか出なかったりしながらアップテンポで刻まれるその音を聞きながら、ジゼルは己が《Mk-V》を起動させた。
「そろそろお兄さんをお助けしないとね」
 すんすんと鼻を鳴らし鳴らし、陽気に独り言を言いながら、全天周囲モニターが点灯するのを確認すると、ジゼルは即座に眼前の光景を把持する。
 高度数十メートル、メガ粒子の閃光とバーニアの閃きが立て続けに唸り、張り紙の空を彩る。
「ヴィルケイと新入りの天才君相手にやるっていってだけど」
 平然と言ってみせたクレイの顔を思い浮かべる。戦闘開始から3分―――MS戦闘はほとんど4分で片が付くと言われる中、2対1でやり合ってる割には善戦している。勿論、ひたすら防御に回っているからやられていないだけで、あと数分もすれば―――素人でもわかることだ。
 それでも、口だけではない―――経歴は伊達ではないということか。
 ジゼルは幽かに猥雑を孕んだ笑みをしてみせた。舌なめずりと共に、ビルの上で膝立ちさせていた陸軍迷彩の《Mk-V》が身じろぎする。
「頑張った子にはご褒美を上げないとね」
 操縦桿を握り込む。
 反応した《Mk-V》が右腕のビームライフルを構える。
「《ジェガン》のライフル慣れてないから上手く行けるかな」
 全天周囲モニター、ジゼルから見て右手に映るちょこなんとした黒い銃器をぼんやりと眺めてみる。改めてその装備に文句の1つも言いたくなるが……市街地線で取り回しを考えれば文句も言えまい。それに、その程度の壁を前にして根を上げるような程の腕ではない。
 鼻歌を朗々と―――時折音程を外し―――歌い上げながら、ジゼルは照準レティクルに白亜の《リゼル》を収めた。
 ※
《Mk-V》の強さはそのパワーにある―――強引にビームジャベリンを叩きおろし、威力を殺しきれない蒼白の《リゼル》がよろめく―――が、隙とはならない。間隙を貫くように下方から突撃を仕掛ける白亜の《リゼル》が腕部グレネードを放つ。幽かに後退して回避すれば、攸人の《リゼル》との間に割って入り、ビームサーベルを逆袈裟に振り抜く。
 あわや槍部でその斬撃を受け止めたクレイは、全身から汗を噴き出しながら、知らず笑っていた。
 ―――エースパイロットを孤高の存在とする論調があるが、それはほぼ誤りである。ただ孤独でワンマンアーミーを貫くのは単なる腕自慢の間抜けだ。
 真のエースパイロットは、僚機を絶対に墜とさせない。
 眼前で鍔迫り合いを演ずる白亜に橙色を引いた《リゼル》―――ヴィルケ
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