6話
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シュペンスト07、《G-V》出るよ)
「ゲシュペンスト08、同じく《G-V》で行きます」
陸戦迷彩の《Mk-V》がまずガントリーの中より這い出る。そのデカい図体らしい、のっそりとした歩みで牢獄の中から出るのを見届けると、クレイも《ガンダムMk-X》に主脚歩行を促した。
※
廃棄された市街―――という位置づけで、わざわざ拵えられた欺瞞の都市には人っ子一人いない。演習区画のうちの一つであるこの市街に民間人が入り込むことなどはほぼありえず、軍属の人間にしても使用中の演習区画に入る間抜けはいないだろう。そもそも廃棄寸前のコロニーを転用しているだけのコロニー内に住人がいることは恐らく、無い。
畢竟、この演習用戦域を腹に抱えたコロニーに居るのはクレイとジゼル、そして第1小隊第2分隊の機体のみである。
クレイは、《Mk-X》の武装を今一度確認した。市街地戦闘ということもあり、標準装備であるビームスマートガンではなく、取り回しに優れる小型のビームライフルに、シールドは近接戦闘を主眼に置いた82式近接装攻殻改―――G.A.W.S-82改を装備する。
全天周囲モニターに映る光景に視線を巡らせ―――狭い、とクレイは思った。連邦軍における数少ない第4世代機である《Mk-V》は、重火力でこそないものの、その大柄な機体にそぐわない高機動がウリで、近接格闘戦性能とインコムを駆使した砲撃戦能力により戦域を支配する。
広大な宇宙こそ《ガンダムMk-V》の想定戦域であり、市街地などという箱庭は窮屈そのものだ―――。
(ねぇ、そういえば紗夜が言ってたんだけど)
「なんですか?」
ジゼルからの無線通信の回線が開く。欺瞞的に散布された幻影のミノフスキー粒子により、音声はややノイズが入っているが近接での無線通信ということもあって問題なく聞こえる。
(《ズィートライ》のペットネーム、《リゼル》になったんだって)
「へーそうなんだ。というか。《リゼル》ってなんです?」
(なんだっけ。なんちゃらエスコートリーダーの略なんだって)
今一度、クレイは相槌を打った―――ジゼルなりの、気遣いなのだろう。HUDに投影されたバイタルステータスを見ると、知らず知らずのうちに緊張気味になっていた。
高々、演習なのに―――。
(じゃあ予定通りに動くけど、本当にいいの?)
「ええ、やれますよ」
返す言葉が少しだけ上ずる。
心配そうな、というより疑るような声色だったが、それも当然のことではある。クレイの腕は確かに数値という形で証明されても、コンバットプルーフのなされたものではない。それを僅かでも証明するためにも、クレイはいつもの声色に努めようとしたのだが。
(ま、実戦てわけじゃないしね。存分にやってちょうだいな)
微笑を一つ。通信ウィンドウを閉じ、主脚歩行だけ
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