5話
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(エイジャックスよりゲシュペンスト02、VIBS起動します)
耳を打つ通信使の声に、一言応じたパイロットは、全天周囲モニターの外へと視線を泳がせた。
暗黒の常闇に浮かぶ無数の宇宙ゴミは、VIBSによるデジタル映像ではなく現実の物だ。数年前から建設が始まったサイド8の建造の際に排出された産廃物が捨てられているのだ―――ということに、ゲシュペンスト02のコールサインで呼ばれたパイロットは興味のかけらも抱いてはいなかった。
操縦桿を握り込み、フットペダルを押し込む。前面からかかる程よい負荷Gを感じながら、パイロット―――MSZ-006X2《ゼータプラス》のパイロットは周囲に視線をやる。
真紅に染められた無垢な瞳が敵を探る―――肉眼で、ではない。
見るという動作は、ヒト種だからやってしまう慣習のようなものだ。その本質は見るのではなく観る。このパイロット風に言わせれば、ざわざわした感触の探知というものだ。より一般的な言い方をすれば、敵意だの殺気だのと呼ばれる胡散臭い感覚を感じ取る、とでも言おうか。
唾液を飲み込んだパイロットは、自機を可変させた。コンマ数秒で、戦闘機のような平べったい形状から四肢をもつ人型へ―――MS形態に成った。
四肢をばたつかせることによるAMBAC機動と身体各所に装備されたバーニアを小刻みに吹かし、デブリの陰に隠れた《ゼータプラス》の胎の中で、HUDに投影されたレーダーと、己が神経を統合させる。
敵―――6。
想定機種は《ジムV》と《百式改》の混成部隊。
相対距離は数十キロ。
問題は―――。
多目的ディスプレイに手を伸ばし、事前のブリーフィングにあった情報を呼び出す。
第2小隊後衛に位置する、砲撃支援用装備の《ジムV》が邪魔だ、と思った。このパイロットの腕を持ってすれば、大した障壁ではないが、戦いとは常に細心の注意を払い、最善の方法を持って挑まねばならない―――というような理知的思考は、実はパイロットの頭の1/3も占めてはいなかった。単に、面倒くさいなぁぐらいな感想を惹起させたに過ぎないのである。ただ、その面倒くさいという単純な思惟が全てを把持しているのである。
どうやって、後方の部隊を仕留めるか。何度、何十度、何百度と乗りこなし、手に馴染んだ愛機の武装は確認するまでもない。
漆黒の《ゼータプラス》の頭部に備えられた、黒々した孔―――ハイメガキャノン。
射程圏内に入るまで息を潜め、時が来たらきゅってしてドカーン。そんな大ざっぱなプランニングをしながら、この機体で最も高価な電子機器―――身体を抜け出し、機体を抜け出し、外界まで広がった神経が敵を捉える。
相対距離は―――。
一瞥。先行している第1小隊は既に双方攻撃範囲内だが無視。その向こうからくる敵機に《ゼータプラス》を相対させ
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