5話
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前のモニターを眺めていたフェニクスは、まぁこんなものだろうなといつも通りの麗とした顔色を変えなかった。
「ヴァルキュリュアの発現は見られませんでした」
「―――ファンネルも使わなかったからな」
オペレーター―――アヤネ・ホリンジャー中尉がどこか落胆しながらも安堵するという奇妙な感情を含蓄した声色で報告する。フェニクスの応答もおざなりだった。
ヴァルキュリュア―――顔を幽かに顰めたフェニクスは、腕組みしたまま鼻を鳴らした。
「しかし彼女の強さは何度見ても凄まじいな」
艦長席に座る壮年の男がため息交じりに言う。綺麗に整えた七三分けの髪に薄く髭を生やした男は、やや頼りない見た目ながらも『ゲシュペンスト』が他部隊に教導を行う際の遠征時のMS母艦の館長を務めている男でもある。
「あれでまだ全力でないのだからな」
「彼女の存在意義はそれ、ですから」
本心では、無い。薄気味悪さを感じるその言葉に怖気を感じていると、ふむと納得したように艦長が頷く。艦長も、フェニクスが本心で言っているなど露ほども思ってはいない。
「では両部隊に帰投命令を出してやれ。回し蹴りを食らった奴には迎えをやれよ。中でシェイクされているだろうからな」
「了解。こちらエイジャックス、小隊各機は帰投せよ。繰り返す―――」
大きく鼻息を吐く。
モニターに映る漆黒の《ゼータプラス》の真紅の瞳が記憶の中の姿と被る。苦い顔をしたフェニクスは―――今日くらい、存分にしていいことにしようと決心した。
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