4話
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基地内の見取り図は事前配布の資料にあったのと、ニューエドワーズに着いた日に下見はしてあったから道に迷うということもなく、クレイは悠々と基地内食堂へと着いた。
基地内広しということもあって、基地内にも広く食堂が備えられている。そのうちの1つである2番食堂に入ったクレイは、案外空いているな、と思った。
その収容規模に対して、閑散とした食堂に人はまばらだ。長テーブルに一人で座るサナリィの職員らしき人や、BDUにインナーのタンクトップというラフな出で立ちの人が談笑しているぐらいなものだ。
配膳のカウンターなどは士官学校でのそれに似た―――というより士官学校がそれに似せているのだろう―――様式のようだ。入口付近に置かれた、数重にも重なるトレーを慣れた動作で抜き取り、配膳カウンターの前へ。
配膳カウンターの前まで行くと、ラミネート加工された張り紙が数枚。本日の献立と題された紙には、実際の料理の写真が大々的に貼られ、それだけで胃袋が捩じれるのを感じた。
さっそく料理を受け取る―――といきたいところだが、はたして士官学校の様式をそのまま適用していいものだろうか。
クレイは、ごく自然な動作で向こう側を見た。
出入り口が二か所設けられたこの食堂は、現在クレイがいる側と、その反対側の両側から食事を受け取ることができる。カウンターに設けられた配膳口は二か所だ。
クレイが見たのは、その向こうにあるもう一つの配膳口だ。丁度若いサナリィのスタッフだか事務員だかが朝の新鮮さとは無縁そうな疲れた顔で食事を受け取っているところだった。
Yシャツにスーツの格好の中年の男がラミネートを見ながら何事か言うと、十数秒程度の時間で食事を受け取り、よろよろとした足取りでテーブルの海の中へ消えていく。
大して変わらないか―――確認を取ると、クレイは果敢に一歩を踏み出した。
配膳口の前までいくと、奥の方で料理の下準備をしているらしい女性の内の一人がクレイを見とめ、恰幅の良い身体を揺らした。
「何にしますか?」
しゃがれた声に白髪の混じった髪。マスクで顔は窺い知れないが、壮年のおばさんといったところか。至って平静な態度でラミネートを流し見る。
クレイの視線が一点を捉えた。何やら魚の切り身らしきものに土色のソースをぶちまけたようなものが、おどろおどろしく印刷紙の上を占領している。日本の文化に触れる前なら、その料理を蔑みでもって理解したであろうが―――。
「あの、これをお願いします」
「はい? あぁ、はいはい、Bね〜」
陽気な声を上げた彼女が長い箸を取り出し、手元の鍋へ一閃。素早い動作で深底の鍋から、目標を捕獲する。
白いプレートの上に二つの切り身が鎮座し、その威容に鮮緑の野菜が華やかさを添える。続いて女性がその大柄な見た目と大らかな声色からは想像
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